AI関連の発明は一般的には権利行使が難しいと考えられている。確かに、学習の処理自体の工夫に係る発明だと、その構成を特定することは難しい。一方、AIを利用した発明ならば、AIを利用していることを謳ったシステムに対しては、権利行使のきっかけをつかめる可能性がある。その反面、AIを利用する発明は公知の学習手法を利用しただけと見られがちで、特許の進歩性の観点から権利化が難しい。
権利行使が可能と思われるAI関連発明の成立例があるか見てみたい。
(登録例1 点検システム)
【請求項1】
無人飛行体により撮影されたコンクリート護岸の撮影画像を取得する画像取得部と、前記コンクリート護岸におけるヒビ割れの発生に関する統計情報に基づき、前記撮影画像に対して検索対象外範囲を設定する検索対象外範囲設定部と、
コンクリート護岸における複数のヒビ割れ画像に基づき機械学習したヒビ割れ学習モデルを記憶する学習モデル記憶部と、
前記撮影画像の内、前記検索対象外範囲を除いた検索対象範囲に対して、前記ヒビ割れ学習モデルを適用して前記検索対象範囲におけるヒビ割れを検出するヒビ割れ検出部と、
前記ヒビ割れ検出部が検出したヒビ割れを示すヒビ割れ情報を出力するヒビ割れ情報出力部と、
を備える点検システム。
明細書(例えば【0014】)の記載によれば、コンクリート護岸の上方は、波が直接当たりにくくヒビ割れが発生しにくいという事情がある一方、上方は車両や建造物の影響で誤検出が発生しやすいという状況がある。このような状況に鑑み、コンクリート護岸の上方は検索対象外範囲とすることで、精度良くヒビ割れを検出するという考え方に特許が認められたと思われる。
AIの審査基準に記載された事例との関係では、教師データに前処理を行うパターンに該当する。
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