2022年5月17日火曜日

無効審判と異議申立

これは単に思ったこと。

無効審判と異議申立、権利をつぶす観点からそれぞれの勝率が着目されるのは当然であり、統計的には大きな差がないことは、以前の投稿で記載したとおりである(2021/9/8、2020/9/9)。

そうすると、どちらも提起できる時期には匿名で提起できる異議申立が有利ということになる。しかし、審理の過程で特許権者に何を言わせるか、禁反言により何を権利範囲から除外させることができるか、という観点からは両者はかなり違う。

というのは、異議申立では取消理由があるかどうかをまず審判官が審理して、取消理由ありと判断された場合だけ、特許権者は反論すればよい。したがって、権利が維持されるという結論は同じでも、特許権者の反論が必要ないかもしれない。そうすると、権利には全くキズがつかない。
これに対し、無効審判では、まず、特許権者に反論の機会が与えられるので、審判官がどの点に着目するかということを知る前に反論しなければならず、いきおい「反論できるところは反論しておこう」ということになる。その中で、権利の限定材料が出てきたり、権利範囲の外延がより明確になる可能性がある。
異議申立の場合には、そもそも反論しなくてもよいかもしれないという上記の点に加え、審判官が取消の理由と考えている理由が分かるから、反論のポイントを絞りやすい。

ただし、無効審判の場合には、請求人が分かってしまうので、請求人の製品を研究されてしまうということはあるかもしれない。そうするとやはり一長一短か。


[裁判例]【補足】システムを装置に変えることは容易か(令和3年(行ケ)10027号)

 2022年12月29日の投稿で、タイトル記載の裁判例(審決取消訴訟)でシステムを装置に変えることに進歩性が認められたことを報告した。その中で、同日に出された侵害訴訟の判決では、同じ引例を理由に、新規性なしと判断されたことに非常に驚いたとコメントした。  この件について、今月号の...