2020年2月25日火曜日


ベッド操作装置事件(知財高裁 令和元年102日)


 本願発明と引用発明とで記載された課題は異なるものの同一と判断された例である。
従来のベッド操作装置は、安全性のため、利用者は一度電源ボタンを操作しなければならず、その都度電源ボタンの位置を探し、電源ボタンを操作するという余計な操作を利用者に強いてしまうという課題があった。本願発明は、電源が入っている状態で、直ちに操作可能とはせず、いったん何らかの操作をさせて初めて、アクチュエータを駆動し得る状態にした。
これに対し、引用発明は、電源を投入したときにリモコンキーの上に物が誤って置かれていると、不意にアクチュエータが作動してしまい、危険であるという課題に鑑み、電源を投入した際、リモコンの任意のキーが押され、このキーを解放した後にアクチュエータを起動するようにしたものである。

原告は、引例の課題(電源投入前にリモコンに物が置かれた状態の危険)に基づけば、引例からは、電源を投入した後にリモコンのキーが押される発明は把握できないと主張したが、裁判所は、当業者であれば、引例の記載から、電源投入後にリモコンのキー上に物が誤って置かれた場合にも危険性が生じることを理解すると判断した。
本件は、新規性が問題となっている事案であるが、裁判所は、課題に基づいて引用発明が限定的に解釈されることがないということを丁寧に判示している。

2020年2月13日木曜日

ゲームプログラム事件(知財高裁 令和元年6月20日)

 拒絶査定不服審判の請求不成立に対する審決取消訴訟である。本願発明は、第1のプレイヤキャラクタと第2プレイヤキャラクタが対戦をする際に、第1のプレイヤキャラクタの情報及び第2のプレイヤキャラクタの情報に基づいて第3者キャラクタを抽出し、参戦させることで従来にない白熱した対戦ゲームを可能にするものである。これに対し、引用発明は、対戦ゲームにおいて、スコアの低い方(弱い側)のグループ(チーム)を支援する第三者勢力としてのNPCを登場させる。

 同一のレベルのキャラクタを登場させるか(本願発明)、人数を増減させるか(引用発明)という相違点について、複数の種類のキャラクタからレベルに応じたキャラクタを抽出することは周知技術であるとして、裁判所は、原告の請求を棄却した。
 
 原告は、本願発明と引用発明とは課題が異なると主張したが、裁判所は、引用発明1と周知技術Aとは従来技術の課題の共通性を理由として動機付けられるから、引用発明1に周知技術Aを適用することが困難となるということはできないとした
 つまり、組み合わせの動機付けには、組み合わせに係る引用発明どうしの課題が問題となるのであって、本願発明との課題の相違は問題とはならない。本願特許出願前の発明に基づいて、本願発明の構成に容易に想到し得たか、というのが進歩性の議論なので、これは妥当な判断といえる。

平成30年(行ケ)10166 (参考URL)088788_hanrei.pdf (courts.go.jp)


2020年2月12日水曜日

中国 特許9分野で首位 ~日本経済新聞~


 今日の日経新聞の一面に、先端10分野のうち9分野において、中国の特許出願数が首位との報道があった。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55092420R30C20A1SHA000/
 件数で比較すれば、それは自然なことだろうと思う。
それよりも、特許の質において、トップ100に米国が64社に対して、日本は18社とは、なぜこうも差があるのだろう。中国も近い将来には質を高めてくることは間違いないので、研究開発のレベルをいっそう高める努力をしていかなければならない。

[裁判例]【補足】システムを装置に変えることは容易か(令和3年(行ケ)10027号)

 2022年12月29日の投稿で、タイトル記載の裁判例(審決取消訴訟)でシステムを装置に変えることに進歩性が認められたことを報告した。その中で、同日に出された侵害訴訟の判決では、同じ引例を理由に、新規性なしと判断されたことに非常に驚いたとコメントした。  この件について、今月号の...