2021年3月9日火曜日

[AI関連発明]段階別自動矯正システム(特開2019-115652)

 (拒絶例2) 段階別自動矯正システム

【請求項1】  患者の個人情報が除外された良好な歯牙矯正資料、前記歯牙矯正資料を基盤に非指導学習を通じて歯牙矯正患者をクラスタリングまたは所定の個数にグループ化したデータおよび歯牙矯正教本で提示した歯牙矯正拘束条件を保存するデータベースと、  歯科患者の歯牙状態を3Dスキャニングした歯牙データに対して前記データベースのグループ化したデータのうちのいずれかのグループに属するのかを決定し、決定されたグループのデータを参照して矯正が必要な歯牙を漸進的に移動させて予測デジタル矯正歯牙データセットを生成し、前記予測デジタル矯正歯牙データセットを単位デジタル矯正データ群に細分化する人工知能矯正データ生成部と、  前記単位デジタル矯正データ群に対応して製作された透明矯正器の着用後の患者の単位矯正歯状態データと前記予測デジタル矯正歯牙データセットとが一致するか否かを前記単位デジタル矯正データ群単位ごとに比較する人工知能矯正データ判断部と、  前記人工知能矯正データ判断部を通じて前記患者の単位矯正歯牙状態データと前記予測デジタル矯正歯牙データセットとが一致する場合、プラス点数を付与し、前記患者の単位矯正歯牙状態データと前記予測デジタル矯正歯牙データセットとが一致しない場合、マイナス点数を付与して前記データベースに保存する人工知能制御部とを含み、  前記人工知能矯正データ生成部は、前記歯牙矯正資料に基づく前記歯牙の前記移動の計画に従って段階的な前記単位デジタル矯正データ群を生成し、  前記人工知能制御部は、前記プラス点数又は前記マイナス点数の付与において、前記患者の歯牙の接点面もしくは咬合状態、咬合湾曲、歯牙移動可塑性及び患者痛みフィードバックの少なくともいずれかを含む補償要素による補償点数を付与し、  前記補償要素に加重値を付与し、総合的に補償点数を算定する人工知能技術を利用した段階別自動矯正システム。

 この発明は、良好な歯牙矯正資料(=正解データ)に基づいて患者をクラスタリングしたグループごとに、歯牙矯正のための歯牙移動計画を段階別に樹立し、良好な歯牙矯正資料を継続して学習することによって、透明矯正器を作製するための3次元歯牙モデルを安定的に得るというものである。

 拒絶理由通知において引用文献が示されたので、出願人は上記下線部のような補正を行い、次の点を主張した。

引用文献1の「(クラスタ化された)患者症例」は、良好な歯牙矯正の症例に限らないので、本願発明のクラスタリングとは異なっている。

引用文献1には、良好な歯牙矯正資料の学習において、補償要素についての補償点数を算出すること(補正による追加部分)については何ら開示も示唆もなく、また、それにより得られる効果についても何ら記載されていない。

 しかし、上記主張にかかわらず、拒絶査定がなされた。出願人の主張に対する審査官の見解は次のとおりである。

補正後の請求項1において、良好な歯牙矯正資料のみに基づいて単位デジタル矯正データ群を生成することは、特許請求の範囲の記載に基づかない主張である。仮にそのような請求項だと理解しても、良好な結果のみに基づいて機械学習を行うことは、本願出願時周知である。

複数のデータを処理するに際し、重み付けを行うことは、技術分野を問わず慣用技術である。そして、歯科分野の評価においても、重み付けを行うことは周知技術である。

②の点については、重み付け自体は周知であるとしても、何を重みとするか、という選択には工夫の余地もあると考えられる。本願においては、「補償要素」の内容もありふれていたのだと思われる。

 


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