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2021年4月5日月曜日

[AI関連発明]スクリーニング方法(特開2019-16359)

 (拒絶例6)
【請求項1】  コンピュータ端末が、インターネットを介してデータベースにアクセスする工程と、  該データベースからデータをダウンロードして該コンピュータ端末に保存する工程と、  ディープラーニングにより、正しい答えを出せるように学習させた人工知能を搭載した コンピュータに、少なくとも1つのマイクロアレイデータを含む、前記コンピュータ端末が該ダウンロードしたデータをアップロードして読みこませる工程と、  該人工知能を搭載したコンピュータに、該コンピュータ端末が質問を送信する工程と、  該人工知能を搭載したコンピュータからの該質問に対する解を該コンピュータ端末が受信する工程と を有することを特徴とする、医薬候補物質をスクリーニングする方法。

 本発明で使用できるデータベースは、生物学、生命科学、医学、歯学、薬学、化学、物理学、数学、統計学、の論文、テキストブック、専門書、及び、辞書等であり、要するに、IBMのWATSONのように大量の質問と答をインプットして学習させ、そのコンピュータに質問を送信して解を得るというものである。本明細書にも、WATOSONを好適に使用できるとある。
 拒絶理由通知書では主引例としてWATSONによるがん治療薬の候補タンパク質を見つける方法の発明が引用された。
 上記の補正後クレームと引例との相違点として、以下が認定された。
<相違点1>
 請求項1に係る発明では、データベースからデータをダウンロードして保存し、該データを、人工知能を搭載したコンピュータに読み込ませ、該人工知能を搭載したコンピュータに質問を行い該質問に対する解を受信するのにコンピュータ端末を用いるのに対して、引用文献1に記載された発明では、それが明示されない点。
<相違点2>
 請求項1に係る発明では、人工知能を搭載したコンピュータに読み込ませるデータが少なくとも1つのマイクロアレイデータを含むのに対して、引用文献1に記載された発明では、それが明示されない点。

<相違点1>に関しては、設計事項にすぎないとされた。これは当然であろう。
<相違点2>に関しては、創薬や医療のためにDNAマイクロアレイを用いた遺伝子情報(
マイクロアレイデータに相当)を用いることが極めて有用であることは、本願出願時において周知であり、主引例に周知技術を採用して相違点2に係る構成とすることは当業者が容易になし得たとされた。

 ダウンロードしたデータに、マイクロアレイデータを含む、としか特定しておらず、マイクロアレイデータを含むことが発明にどう寄与しているのか記載されていなから、マイクロアレイデータが周知である以上、容易想到であるという結論は妥当である。


2021年4月4日日曜日

[AI関連発明]人工知能モジュール開発方法(特開2019-003603)

 (拒絶例5)
【請求項1】
  1)解析目的を選択させるステップと、
  2)前記解析目的に必要なデータを登録させるステップと、
  3)前記解析目的を達成する目標を設定させるステップと、
  4)前記登録されたデータを用いて前記解析目的及び前記目標に適合する学習の実行を指示させるステップと、
  5)前記学習の結果として求められた人工知能モジュールを確認させるステップと、
  6)前記確認された人工知能モジュールを含む学習結果を他の装置に組み込むことを指示させるステップと
  をを順次実行する人工知能モジュール開発方法。
  
  



 引用文献1には、画像認識システムの画面において、認識対象の画像(本願の「データ」に相当する)の選択、画像に対するタグ(本願の「目標」に相当する)の付与、学習ボタンのクリックを受け付け、学習後の認識エンジンを用いた認識結果の確認を行うことが記載されている。引用文献1には、1)解析目的を選択させるステップはない。
 引用文献2には、ニューラルネット構築支援システムが、ニューラルネットの利用目的の入力をユーザから受け付け、当該利用目的に応じた学習を行うことが記載されている。

 出願人は、請求項1に「順次実行する」という要件を追加して、各ステップの時系列を特定した上で、引用文献2に記載された発明は、データを入力し、その後、利用目的を入力するものであるから、本願発明と構成が異なると主張した。

 これに対し、審査官は次のように述べて拒絶した。
 本願出願時の技術常識に照らせば、データと利用目的との間に、その入力順に依存した関係はなく、学習処理の開始までに両者が入力されるものであれば、各々の入力画面の表示順をどのような順番にするかは、画面設計上の選択事項にすぎないので、引用文献2に記載された発明の、利用目的を入力する手順を、引用文献1に記載された発明の、画像の選択を行う手順の前に追加するようにすることも、当業者にとって容易であるので、出願人の上記主 張も採用することができない。
 本件は、引用文献どうしを単純に組み合わせると、出願発明とは表示の順番が異なるだけであったため設計事項とされた。

 なお、ステップ3)の目標の設定が、目的があることを前提としてそれに応じた目標を設定するというような請求項の文言にすれば話が違ったような気もするが、「前記解析目的を達成する目標を設定させる」というだけでは、目的を達成するように人間が考えた目標を設定しているだけとも解され、設計事項と言われても仕方がない。
 順番が異なるという相違点だけでは、進歩性が認められなかった例である。




2021年3月11日木曜日

[AI関連発明]パターン認識装置(特開2019-128623)

 (拒絶例4)パターン認識装置

【請求項1】
  ニューラルネットワークに複数の第1のパターン群を入力し、前記複数の第1のパターン群に対応する複数の第1の識別関数を学習する学習部と、
  前記複数の第1のパターン群とは異なる第2のパターン群に属する第2のパターンを前記第1のパターン群に属すると識別する前記第1の識別関数を前記複数の第1の識別関数から選択し、選択した前記第1の識別関数を前記学習部に再学習させるとともに、前記第2のパターン群に対応する第2の識別関数を前記学習部に学習させる制御部とを備えることを特徴とするパターン認識装置。


この発明は、上図に示すようなパターンを識別する識別曲線を学習によって求めるパターン認識装置に係る発明である。発明のポイントは「再学習」にある。上の例では、最初の学習で4つの識別曲線が求められている。この状態で(●で示す)新規パターンを識別しようとすると、新規パターンX1,X2はA群に、新規パターンX3はC群に誤って識別されてしまう。これを再学習によって次のように識別曲線を作り直すという発明である。


 拒絶理由通知によれば、「引用文献1には、ニューラルネットワークにK個のクラス(「第1のパターン群」に相当)を入力し、前記K個のクラスに属するK個のIモジュールを学習する手段と、前記K個のクラスとは異なるA個の追加クラス(「第2のパターン群」に相当)を前記K個のクラスに属するとエラーを発生する前記Iモジュールを前記K個のIモジュールから選択し、選択した前記Iモジュールに既存のクラスと新しく追加されたクラスとを分離するモジュールを新規に生成し統合して加え、学習させる(追加学習させる)とともに、前記A個の追加クラスに属するA個のIモジュールを学習させる手段と、を備えることを特徴とする装置が記載されている。」
 引用文献1の論文には「追加学習」の項目が設けられ、追加されたクラスに属するパターンをうまく分離できず、エラーを発生する場合には、既存の入出力関係を再学習等によって修正・変更しなければならない、とあるから、まさに本願発明がやろうとしていることが開示されている。
 以上のように、拒絶理由通知および引用文献1を見る限り、本願発明と同一である。(請求項1,2,5-7は新規性なしと判断されている。)
 出願人は、この拒絶理由通知書に対して応答することなく、承服している。
 
 






[AI関連発明]情報処理装置(特開2019-118461)

 (拒絶例3) 情報処理装置

【請求項1】  複数のオブジェクトを使用する電子ゲームに関するゲーム進行履歴であって、ゲームにおいて影響を与えているオブジェクトの情報を含むゲームの状況の情報、当該オブジェクトのうち当該状況において使用されたオブジェクトの情報、及び当該オブジェクトの使用によって生じたゲーム上の効果を示す情報を含むゲームログ、に基づいて、前記オブジェクトの各々の特徴を表す特徴ベクトルを学習する表現学習部を備える情報処理装置であって、  前記表現学習部は、前記ゲームのターンtにおける前記ゲームの状況の情報gtから該ターンtにおいて使用されたオブジェクトct1の情報を除いた情報と、当該オブジェクトct1に関する情報と、を組み合わせた情報(gt,ct1)を入力として、当該オブジェクトct1を使用した際の前記ゲーム上の効果の情報rt教師データとして表現学習を行うことによって、前記複数のオブジェクトの種類の数より少ない次元数で前記複数のオブジェクトの各々を表現した前記特徴ベクトルを求めることを特徴とする情報処理装置。


 本件発明は、人工知能エージェントを学習するために適した表現学習を実現するものである。具体的には、多数のプレイヤのログに基づいて学習を行うことを考える。もし、ゲームに登場するオブジェクトが数百種類もあると、各オブジェクトがどのような場面で使われたか、というログに基づいて学習をするにしても、なかなかうまく学習ができない。そこで、似たようなオブジェクトをまとめて特徴ベクトルを生成する(→次元を圧縮する)、というのが本発明の構成である。

 出願当初請求項では、次元について明確に規定しておらず「少なくとも1つのオブジェクトの情報を除いた情報」を用いて学習を行うと規定されていた。これに対して、leave-one-out交差確認の手法は機械学習の分野において広く知られているとして引用文献と周知技術との組み合わせで進歩性が否定された。

 これに対して、出願人は、「少ない次元数で前記複数のオブジェクトの各々を表現した前記特徴ベクトルを求める」こと等を規定し、これに基づく反論を行った。

 審決は以下のとおり、出願人の主張を排斥した。

引用文献2-3及び参考文献1に記載されるように,機械学習の分野において,特徴ベクトルに含まれる特定のパラメータを削減することにより特徴ベクトルの次元を小さくする演算手法は,広く知られたものであった。・・・引用発明において上記周知の手法を採用することにより,特徴量ベクトルの次元を小さくし,複数のキャラクタの種類の数より少ない次元数で当該複数のキャラクタの各々を表現するように構成することは,当業者であれば容易になし得たものである。

 要するに、特徴ベクトルの次元を小さくすることは周知であるから、これを適用することに困難性はないというものである。拒絶例2と同様であるが、発明独自の部分において差別化をしないと、一般的に知られた手法をいくら大仰に構成要件を追加しても特許性は認められない。

2021年3月9日火曜日

[AI関連発明]段階別自動矯正システム(特開2019-115652)

 (拒絶例2) 段階別自動矯正システム

【請求項1】  患者の個人情報が除外された良好な歯牙矯正資料、前記歯牙矯正資料を基盤に非指導学習を通じて歯牙矯正患者をクラスタリングまたは所定の個数にグループ化したデータおよび歯牙矯正教本で提示した歯牙矯正拘束条件を保存するデータベースと、  歯科患者の歯牙状態を3Dスキャニングした歯牙データに対して前記データベースのグループ化したデータのうちのいずれかのグループに属するのかを決定し、決定されたグループのデータを参照して矯正が必要な歯牙を漸進的に移動させて予測デジタル矯正歯牙データセットを生成し、前記予測デジタル矯正歯牙データセットを単位デジタル矯正データ群に細分化する人工知能矯正データ生成部と、  前記単位デジタル矯正データ群に対応して製作された透明矯正器の着用後の患者の単位矯正歯状態データと前記予測デジタル矯正歯牙データセットとが一致するか否かを前記単位デジタル矯正データ群単位ごとに比較する人工知能矯正データ判断部と、  前記人工知能矯正データ判断部を通じて前記患者の単位矯正歯牙状態データと前記予測デジタル矯正歯牙データセットとが一致する場合、プラス点数を付与し、前記患者の単位矯正歯牙状態データと前記予測デジタル矯正歯牙データセットとが一致しない場合、マイナス点数を付与して前記データベースに保存する人工知能制御部とを含み、  前記人工知能矯正データ生成部は、前記歯牙矯正資料に基づく前記歯牙の前記移動の計画に従って段階的な前記単位デジタル矯正データ群を生成し、  前記人工知能制御部は、前記プラス点数又は前記マイナス点数の付与において、前記患者の歯牙の接点面もしくは咬合状態、咬合湾曲、歯牙移動可塑性及び患者痛みフィードバックの少なくともいずれかを含む補償要素による補償点数を付与し、  前記補償要素に加重値を付与し、総合的に補償点数を算定する人工知能技術を利用した段階別自動矯正システム。

 この発明は、良好な歯牙矯正資料(=正解データ)に基づいて患者をクラスタリングしたグループごとに、歯牙矯正のための歯牙移動計画を段階別に樹立し、良好な歯牙矯正資料を継続して学習することによって、透明矯正器を作製するための3次元歯牙モデルを安定的に得るというものである。

 拒絶理由通知において引用文献が示されたので、出願人は上記下線部のような補正を行い、次の点を主張した。

引用文献1の「(クラスタ化された)患者症例」は、良好な歯牙矯正の症例に限らないので、本願発明のクラスタリングとは異なっている。

引用文献1には、良好な歯牙矯正資料の学習において、補償要素についての補償点数を算出すること(補正による追加部分)については何ら開示も示唆もなく、また、それにより得られる効果についても何ら記載されていない。

 しかし、上記主張にかかわらず、拒絶査定がなされた。出願人の主張に対する審査官の見解は次のとおりである。

補正後の請求項1において、良好な歯牙矯正資料のみに基づいて単位デジタル矯正データ群を生成することは、特許請求の範囲の記載に基づかない主張である。仮にそのような請求項だと理解しても、良好な結果のみに基づいて機械学習を行うことは、本願出願時周知である。

複数のデータを処理するに際し、重み付けを行うことは、技術分野を問わず慣用技術である。そして、歯科分野の評価においても、重み付けを行うことは周知技術である。

②の点については、重み付け自体は周知であるとしても、何を重みとするか、という選択には工夫の余地もあると考えられる。本願においては、「補償要素」の内容もありふれていたのだと思われる。

 


2021年3月8日月曜日

[AI関連特許]故障予測装置(特開2019-8675)

 (拒絶例1)故障予測装置

 これまで登録例を紹介してきたが、登録と拒絶の境界を明らかにすべく拒絶例についても検討する。

【請求項1】
 管理対象機器を構成するプリント板の故障時期を予測する故障予測装置であって、
前記管理対象機器の稼働状況に対する該管理対象機器を構成するプリント板の故障時期を学習する機械学習装置を備え、
 前記機械学習装置は、
 前記管理対象機器の稼働状況を示す稼働状況データ及び前記管理対象機器の機器構成を示す機器構成データを環境の現在状態を表す状態変数として観測する状態観測部と、
 前記管理対象機器の保守履歴を示す保守履歴データをラベルデータとして取得するラベルデータ取得部と、
 前記状態変数と前記ラベルデータとを用いて、前記管理対象機器を構成するプリント板の故障時期と、前記稼働状況データ及び前記機器構成データとを関連付けて学習する学習部と、
 を備える故障予測装置。

 この発明は、稼働状況及び機器構成と保守履歴との関係を学習し、学習結果である故障推定モデルを用いてプリント板の故障時期を予測する発明である(故障推定モデルを用いた故障時期の予測については明確に規定されていない)。

 引用文献1には、保守管理サーバ50内の演算装置40が、保守管理データベース30から、保守対象装置11の稼動状況、構成情報、故障履歴を受け取ると、部品ごとおよび装置全体の負荷を計算し、部品ごとおよび装置全体の耐久性をニューロン法によって予測することによって、当該装置11の故障発生予測箇所、故障発生推定時刻等を算出する発明が記載されている(段落23~32、図1~2)。
 審査官は、ニューロン法が機械学習であるとして、本願発明と引用文献1との相違は、
故障予測の対象がブリント板か部品かの違いしかないとし、引用文献1に記載の発明において、プリント板のレベルで故障発生を予測することは、当業者であれば容易に推考し得ると判断した。
 ニューロン法がニューラルネットワークによる機械学習を示す用語なのかどうか、引用文献1からは明確ではないが、ニューロン法=ニューラルネットワークとの審査官の理解を前提とすれば、引用文献1には本願発明とほぼ同一の発明が開示されていると言える。
 

除くクレーム(令和6年(行ケ)第10081号)

 1 除くクレームについて  特許実務において、引用文献と差別化を図るために、構成要件の一部を除くことが行われることがある。新たな技術的事項を導入しないものである場合には構成要件の一部を除くことが認められるが(ソルダーレジスト大合議事件(平成18年(行ケ)第10563号))、...