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2024年12月26日木曜日

[メモ]独立項が非侵害で従属項が侵害ということはあり得るか(均等論)

 侵害鑑定を行う場合、通常は、独立項が非侵害ならばその従属項も非侵害と結論する。なぜなら、従属項は独立項の構成要件をそっくりそのまま備えているから、独立項において非充足の要件があれば従属項もその非充足の要件を備えているからである。

 思考実験として、均等侵害の場合について考えてみた。
【請求項1】 AとBを備える装置。
【請求項2】 Cを備える請求項1に記載の装置。
[被疑侵害品]A+B’+C
[出願前公知技術]A+B’

(ケース1)Bが本質的部分の場合(※)
均等の第1要件を満たさないから、請求項1は非侵害。請求項2についても非侵害。

※技術思想同一説からするとBが本質的部分という言い方は正確ではないかもしれないが簡単のためこう書く。

(ケース2)Bが本質的部分ではない場合
 BをB’に置き換えても同一の作用効果を有し、かつ置き換えが容易ならば請求項1に係る発明の均等侵害の可能性あり。
 ただし、被疑侵害品は出願前公知技術と同一だから第4要件を充足せず、均等侵害は成立しない。

 問題は、請求項2である。
 BをB´に置き換えても同一の作用効果を有し、かつ置き換えが容易ならば請求項2に係る発明の均等侵害の可能性あり、というのは請求項1と同じである。
 被疑侵害品の構成はA+B'+Cであり、出願前公知技術A+B’と同一ではない。もし、公知技術A+B’から被疑侵害品A+B’+Cを容易に推考できないとした場合、第4要件を充足することになる。
 つまり、この場合は請求項2に係る発明の均等侵害の可能性がある!

 請求項1は侵害ではないのに、その従属項である請求項2は均等侵害になることをどう考えたらよいだろうか?
 請求項1が特徴のない構成なのである。請求項1はそもそも特許される価値がないがたまたま特許になってしまっており、請求項2が本命である。チャレンジクレームがそのまま特許になったような場合である。
 請求項2の方が本命で本質的部分を有している。なので、請求項2の本質的部分(上記例では構成C)を共通して備えているために、請求項1は均等侵害が成り立たないのに請求項2は均等侵害になる可能性がある。

2023年1月9日月曜日

早期審査についてPart2

 以前、早期審査と特許査定率の関係について調べたが、今回は早期審査を経て登録になった特許と、通常(非早期)の審査で登録になった特許について、異議申立事件での取消率等に影響があるのかどうかを調べた。
 対象は、2014年1月以降に特許公報が発行された案件で、異議申立が終了している案件である。前も書いたが、データベースに、早期審査をした、という分類はなかったので、早期審査の事情説明書、早期審査に関する通知書、早期審査に関する報告書等のいずれかが出ていることをキーとして早期審査の特許に分類した。

 まず、早期審査で登録になった特許が全件の26.1%と、異議申立ての全件数に占める割合は非常に高かった。(前回調査によれば、登録件数に占める早期審査の割合は、6%程度にすぎない。)
 しかし、取消理由が通知される割合、訂正請求を出した割合、権利が取り消される割合については、早期審査で登録になった特許と非早期の審査で登録になった特許でほとんど違いがない。
 
 肌感覚としては、早期審査した案件の特許査定率の高さとも相俟って「よくこれで特許になったなあ」と思うものが多いような気がしたが、必ずしもそうではないのかもしれない。
 これまで、早期審査→特許査定率が高いと思っていたが、原因と結果が逆なのかもしれない。つまり、特許査定率が高いものが早期審査されている。
 早期審査の特許の方が異議申立てされる割合が高いのは、それだけ、重要性が高いと考えれば説明がつく。

2020年7月26日日曜日

早期審査について

 早期審査と特許査定率の関係について、データベースで調べてみた。方法は次のとおりである。 

 

 すでに審査がほぼ終了していると思われる、2005年1月1日から2015年12月31日に出願された案件を対象とした。これらを査定種別により、査定なし、登録査定、拒絶査定に分けた。拒絶査定の中には審判で登録審決と受けているものもあると思われるので、それらについては登録に含め、逆に拒絶査定の件数から登録審決の件数を差し引いた。 

 登録と拒絶のそれぞれについて、審査の報告書が作成されているものとそうでないものに分けた。厳密には、早期審査の報告書があっても、「早期審査を行わない」としたものもあるかもしれないが、概ね、早期審査は認められるという前提である。このようにして、早期審査の有無と登録/拒絶を分類すると、以下のようになった。 


  

早期 

非早期 

登録査定、登録審決 

128,054件 

1,840,751件 

拒絶査定(登録審決を除く) 

12,213件 

593,011件 

登録:拒絶 

10.5:1 

3.1:1 


 この表によれば、ずいぶんと多く登録されているようであるが、これは査定なし(審査請求せず)の件数を除外し、審査請求された案件のみ計上しているためである。 

 非早期の案件では、審査請求をした案件では、拒絶1に対し登録3.1の割合であった。これに対し、早期審査を行った案件では、拒絶1に対し登録10.5の割合であり、極めて高い確率で特許が得られている。これは早期審査を行う案件は特許権者が自信を持っている案件だからなのか、審査の関係なのかはわからない。

 そこで、登録された案件に対する無効審判及び異議申立の件数についても調べてみた。

 

  

早期 

非早期 

登録査定 、登録審決

120,054件 

1,840,751件 

無効審判、異議申立がされた件数(割合) 

1,043件 

(8.7%) 

3,957件 

(0.21%) 

 

 早期審査で登録を受けた案件の方が、一般的に権利者が権利活用に積極的であり、第三者から無効の請求や異議の申立てをされる可能性が高いということはことは想像がつく。しかし、これほどまでに差が大きいと、早期審査案件の方が権利に瑕疵があることが多いのではないかと思ってしまう。 

 早期と非早期の案件で、無効審判又は異議申立の成功率に差があるのか調べたかったが、自分が使っているデータベースでは簡単ではないようであった。 

2020年1月25日土曜日


「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明」


 特許法は、特許出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明は、特許を受けられないことを規定している。
 近年では、インターネットに種々の情報が開示されるが、インターネットの情報は日々更新されるため、いつ公知になったものかを立証することは容易でない場合もある。裁判例を調べてみたところ、インターネットの情報が出願前に公知であったことを認めたものと認めていない例があった。証拠に記載された日付の信ぴょう性を評価するという事案ごとの判断がなされている。つまり、ケースバイケースであり一概にはどうということは言えないが、判断事例を知ることも意義があるので、いくつか例を挙げる。
 Wayback Machineは、インターネットアーカイブが運営するデジタルアーカイブであるが、Wayback Machineの情報を提出している例が多数みられた。Wayback Machineの情報が認められた例として、平成30年(行ケ)第10178号、平成16年(ワ)第10431号がある。後者の裁判例では、平成15年12月9日時点のページと、平成15年2月27日時点のページを比べ、平成15年2月27日のページにはなかった「※意匠登録申請済※」の記載が平成15年12月9日のページに存在することが意匠出願の経緯とも合致するいう事情も考慮された。
 Wayback Machineの情報が否定された例として、平成23年(ネ)第2651号、平成18年(行ケ)第10358号がある。前者の裁判例では、Wayback Machineの画像について、画像のURLのみが保存されている場合と、URLに加えて画像自体が保存されている場合があると述べている。画像を証拠とする場合には注意が必要であろう。
 Wayback Machine以外の例として興味深いのはブログの更新情報が認められた例である(上記の平成30年(行ケ)第10178号)。ブログ本文の更新日の情報、ブログの更新情報に表示された年月日、および、ブログにその更新日時と開催期間が整合するイベントの開催告知が記載されていることから、その更新日に公衆に利用可能になったと判断された。
 なお、周知技術の認定に用いられる場合、つまり、数ある証拠のうちの1つ(あるいは複数)といった場合には、公知日がどうこうということは言われていない印象であった。

方法発明の間接侵害が否定された例(令和6年(ワ)第70583号)

  液晶キーボードのキーの背景画像を着せ替える方法に関する特許を有する原告らが、文字入力キーボードアプリ「Simeji」を製造販売するバイドゥ株式会社を訴えた事件である(東京地裁民事第46部・令和8年4月15日判決)。実際に本件各発明に係る方法を使用するのは、被告製品をインストー...