2024年3月17日日曜日

[裁判例]【補足】システムを装置に変えることは容易か(令和3年(行ケ)10027号)

 2022年12月29日の投稿で、タイトル記載の裁判例(審決取消訴訟)でシステムを装置に変えることに進歩性が認められたことを報告した。その中で、同日に出された侵害訴訟の判決では、同じ引例を理由に、新規性なしと判断されたことに非常に驚いたとコメントした。

 この件について、今月号のパテントに高石秀樹弁護士が投稿しており、2つの判決には矛盾はないと述べているので紹介する。詳しくは、パテント2024年3月号の「同一特許、同一引用文献で、同日同ヵ部の知財高裁判決(審決取消訴訟と侵害訴訟)における新規性判断が分かれ、また、訂正の再抗弁が時機後れ却下された事例」(弁護士 高石秀樹)を参照されたい。

 2つの裁判の結論が異なったのは、以下の理由からである。
 
・審決取消訴訟
 審決は、本件発明の「情報処理装置」は単独であるのに対し、主引用発明の「学習・生活支援システム1」は複数の装置を含むから両者は相違すると判断し、新規性を認めた。
 審決取消訴訟は、(審決の適法性が審理対象であるため)裁判所は審決の認定について判断し、誤りはないとした。

・侵害訴訟
 被告は、学習・生活支援システム1に含まれる「学習・生活支援サーバ」が本発明の「情報提供装置」に該当すると主張し、裁判所は新規性なしと判断した。

 以上のように、主引用発明の認定(引用文献からどのような発明を主引用発明とするか)についての被告の主張が両判決では異なっていたため、結論が変わったというわけである。




[裁判例]【補足】システムを装置に変えることは容易か(令和3年(行ケ)10027号)

 2022年12月29日の投稿で、タイトル記載の裁判例(審決取消訴訟)でシステムを装置に変えることに進歩性が認められたことを報告した。その中で、同日に出された侵害訴訟の判決では、同じ引例を理由に、新規性なしと判断されたことに非常に驚いたとコメントした。  この件について、今月号の...