2021年5月31日月曜日

[裁判例]音楽教室の著作権(令和2年(ネ)10041)

 音楽教室等における教師及び生徒による演奏等が音楽教室による著作権(演奏権)の侵害行為にあたるか、JASRACとヤマハ音楽振興会との間で争われた事件の控訴審である。
(著作権法第22条) 
 著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。
 
 判決では、教師による演奏は演奏権の侵害にあたり、生徒による演奏は演奏権の侵害に当たらないとされた。原審では、生徒による演奏も演奏権の侵害に当たると判断されていたが、控訴審で判断が覆された。
 以下に、教師による演奏と生徒による演奏の判断を対比して示す。
 

 

教師の演奏

生徒の演奏

演奏の主体

音楽教室事業者の管理支配下において教師に演奏させていると言える。

 

音楽教室事業者は一定の環境準備をしているものの、教授を受けるという生徒の演奏の本質から見て、生徒がした演奏の主体は生徒である。

★原審の結論を覆した。

生徒は公衆か?

受講契約をすれば誰でもレッスンを受講できるから、生徒は不特定の者(=公衆)にあたる。

 

判断せず。

聞かせることを目的とするか?

公衆である生徒に対して聞かせる目的で行われることは明らか。聞き手に官能的な感動を与えることまでは要件ではない。

判断せず。


 判決では、生徒の演奏は、音楽教室事業者の行為に当たらないから、生徒の演奏によっては、被控訴人らが損害賠償債務や不当利得返還債務を負うものではないとされた。
 
 原審では、「音楽教室における生徒の演奏は,原告らと同視し得る教師の指導に従って行われるものなので,その演奏について原告らの管理・支配が及んでいるということができる。」と判断されたが、控訴審ではこの判断が覆された。



2021年5月15日土曜日

特許法等の改正

特許法等の一部を改正する法律案が衆参両議院で可決された。
今回の改正の内容は、下記である。

【デジタル化等の手続の整備】
 ・審判口頭審理のオンライン化
 ・印紙予納廃止・料金支払方法の拡充
 ・意匠・商標国際出願手続のデジタル化
 ・災害等の理由による手続期間徒過後の割増料金免除
【デジタル化等の進展に伴う企業行動の変化に対応した権利保護の見直し】
 ・海外からの模倣品流入への規制強化
 ・訂正審判等における通常実施権者の承諾要件の見直し
 ・特許権等の権利回復要件の緩和
【知的財産制度の基盤強化】
 ・特許権侵害訴訟における第三者意見募集制度の導入
 ・特許料等の料金体系の見直し
 ・弁理士制度の見直し

 このうち、訂正審判等における通常実施権者の承諾要件は、訂正によって権利範囲が狭くなると、通常実施権者の利益を損なうという趣旨から設けられていた制度である。
 この要件に関しては、訂正の都度、全ての通常実施権者の承諾を得ることが負担であり、承諾が得られない場合には、無効審判に対する重要な防御手段が奪われるという問題があった。その一方で、訂正により権利範囲が狭くなり、通常実施権者の製品が権利範囲から外れても引き続き実施可能であるから、不利益が生じない。といった背景から、通常実施権者の承諾要件は外された。
 なお、新しい条文では、承諾を要するのは専用実施権者と質権者であり、独占的通常実施権者の承諾も不要である。


2021年5月6日木曜日

[記事]技術情報持ち出し(ソフトバンク、楽天モバイル)

 (ポイント)
・2020年1月にソフトバンクから楽天モバイルに転職した元社員が、ソフトバンクの技術情報を持ち出した疑い →元社員は不正競争防止法違反で逮捕されている
・2020年11月 証拠保全
・2020年12月 営業秘密の利用停止の仮処分
・2021年 5月 損害賠償請求(1000億円の一部請求10億円)

(URL)

2021年5月4日火曜日

[記事]Apple vs. Epic (アプリ手数料)

 (ポイント)
・Epicは、世界的な人気ゲーム「フォートナイト」の開発会社
・Epicは、Appleのアプリ配信サービス「アップストア」が独占にあたるとして米国にて提訴(2020年8月)。
・主な争点は次のとおり。
 ①Appleは他の配信サービスを使うことを禁止しているが、これは独占にあたるか。
 (Epicは、独自の課金システムを導入し、アップストアから削除された)
 ②アップルの制限は、消費者に不利益を与えているか。
 ③30%という手数料は割高か。
・Appleは、2021年1月か中小事業者向けの手数料を15%に引き下げている。
・Epicは、EUの欧州委員会に対しても、AppleがEU競争法に違反していると主張し、調査を要請(2021年2月17日)

(URL)

2021年5月3日月曜日

[記事]自動運転の特許件数

 (ポイント)
・2014~2018年の自動運転関連技術の日・米・欧・独・中・韓への特許件数
・合計53,394件
・日本国籍の出願人37.5%でトップ、米(21.2%)、独(14.7%)が続く。

(出典)


[裁判例]【補足】システムを装置に変えることは容易か(令和3年(行ケ)10027号)

 2022年12月29日の投稿で、タイトル記載の裁判例(審決取消訴訟)でシステムを装置に変えることに進歩性が認められたことを報告した。その中で、同日に出された侵害訴訟の判決では、同じ引例を理由に、新規性なしと判断されたことに非常に驚いたとコメントした。  この件について、今月号の...