(登録例10)生コンクリートの品質予測方法
生コンクリートの材料を混ぜ合わせているときの映像と出来上がる生コンクートの品質との関係を学習した学習済モデルを用いて、生コンクリートの材料の撮影映像から品質を予測する発明である。出願当初の請求項において、請求項3は拒絶理由が発見されないとされ、これに限定することで特許査定となったので、請求項1、2と請求項3で何が違うか見てみたい。
【請求項1】(出願当初)
予測モデルを用いて、生コンクリートの品質を予測するための方法であって、
上記予測モデルは、画像データを含む学習用入力データと生コンクリートの品質に関する学習用出力データの組み合わせである学習データを複数用いた機械学習によって作成されたものであり、
画像データを含む予測用入力データを、上記予測モデルに入力し、上記予測モデルから生コンクリートの品質に関する予測用出力データを出力して、該予測用出力データを用いて生コンクリートの品質を予測することを特徴とする生コンクリートの品質予測方法。
【請求項2】
上記画像データが、上記生コンクリートの材料を練り混ぜるためのミキサ内を、水と水以外の生コンクリートの材料の練り混ぜを開始して上記ミキサの電力負荷値が安定した後に、撮影したものである請求項1に記載の生コンクリートの品質予測方法。
【請求項3】
上記画像データが、上記生コンクリートの材料を練り混ぜるためのミキサ内を、水と水以外の生コンクリートの材料を練り混ぜている状態で、連続的に撮影した複数の画像の各々から得られる、複数の画像データであり、上記複数の画像データの各々について、画像データを含む予測用入力データを、上記予測モデルに入力し、上記予測モデルから生コンクリートの品質に関する予測用出力データを出力した後、出力された複数の予測用出力データの移動平均値を用いて生コンクリートの品質を予測する請求項1又は2に記載の生コンクリートの品質予測方法。
予測モデルを用いて、生コンクリートの品質を予測するための方法であって、
上記予測モデルは、画像データを含む学習用入力データと生コンクリートの品質に関する学習用出力データの組み合わせである学習データを複数用いた機械学習によって作成されたものであり、
画像データを含む予測用入力データを、上記予測モデルに入力し、上記予測モデルから生コンクリートの品質に関する予測用出力データを出力して、該予測用出力データを用いて生コンクリートの品質を予測することを特徴とする生コンクリートの品質予測方法。
【請求項2】
上記画像データが、上記生コンクリートの材料を練り混ぜるためのミキサ内を、水と水以外の生コンクリートの材料の練り混ぜを開始して上記ミキサの電力負荷値が安定した後に、撮影したものである請求項1に記載の生コンクリートの品質予測方法。
【請求項3】
上記画像データが、上記生コンクリートの材料を練り混ぜるためのミキサ内を、水と水以外の生コンクリートの材料を練り混ぜている状態で、連続的に撮影した複数の画像の各々から得られる、複数の画像データであり、上記複数の画像データの各々について、画像データを含む予測用入力データを、上記予測モデルに入力し、上記予測モデルから生コンクリートの品質に関する予測用出力データを出力した後、出力された複数の予測用出力データの移動平均値を用いて生コンクリートの品質を予測する請求項1又は2に記載の生コンクリートの品質予測方法。
ここでは、新規性、進歩性に関する拒絶理由について記載する。
請求項1については引用文献1に、生コンクリートの施工性に関する評価を示す情報(=品質)と生コンクリートのスランプ試験における試験体の画像(=画像データ)とを関連付けて予め機械学習をさせた基準情報を有し、画像データを用いて施工性を評価することが記載されている。
請求項2について、引用文献2に、電力センサ、天候センサの値をニューラルネットワークの特徴量として与えることで、フレッシュコンクリートのコンシステンシーを推定する発明が記載されており、これを引用文献1の発明に適用することで当業者が容易に想到し得る。
一方で、請求項3については、拒絶の理由が発見されていない。
請求項3の特徴は、画像を1枚だけ使うのではなく、連続的な複数の画像から品質に関するデータを得て、この移動平均を使うことである。請求項3の作用効果は詳細には説明されていないようであるが、連続的な複数の画像を使うことで、ノイズ等の影響が少なくなり、予測精度が高まると想像される。複数の結果の移動平均を使うことは、予測モデル等の工夫ではないが、予測モデル等を用いた予測が必ずしも完全ではないことを補償する方法として有用なので、こういった工夫は、予測モデルを用いた予測と相性が良いかもしれない。
なお、本件の分割出願では、「複数の出力データの平均値(ただし、移動平均値を除く。)」としても特許(特許6735944)になっているので、移動平均であることは、特許性の決め手ではなく、複数のデータであることがポイントであると思われる。
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