2022年1月27日木曜日

[裁判例]安否確認システム(知財高裁令和4年1月11日)

 「安否確認システム」という発明の拒絶審決に対する審決取消訴訟である。
出願に係る発明は、人間が生活するうえにおいて必須である「照明」の点灯/消灯によって見守り対象者の行動を把握するというものであり、次の構成を有している。

【請求項1】 
 クラウド環境下における安否確認システムであって, 
 クラウドを構成するサーバと, 
 設置された施設及び前記施設内での設置箇所に係るID番号が予め前記サーバに登録され,点灯又は消灯する照明装置と,受信機と,を備え, 
 前記受信機は,前記サーバが送信する管理画面情報を受信し,安否通知ルールの設定,変更及び追加する画面を表示し, 
 前記サーバは,前記安否通知ルールの設定,変更及び追加の情報を登録し,
 前記照明装置は,点灯又は消灯に応じて前記ID番号が重畳された電波を 発信する発信装置を備え, 
 前記発信装置は,交換可能であり,
 前記サーバが,前記発信装置が発信する前記電波に重畳された前記ID番号に基づき,前記受信機の画面を介して登録された前記安否通知ルールに応 じて,前記照明装置の点灯又は消灯に係る情報を見守り対象者の安否情報として見守り者の外部端末に通報することを特徴とする安否確認システム。

 これに対し、引用発明は、電源タップ4は,1対1の関係で接続されている電気機器(これには照明器具も含まれる)の稼働状態を判定し,電源タップを一意に識別する検出部IDをつけて無線送信することで、遠隔監視装置で機器の稼働状況を表示させる。これにより、機器稼動状況に基づいて住宅に訪ねていくべき異常や変化があるかを認識できるというものである。

 裁判所は、次のように、本件発明と引用発明との一致点の認定に誤りがあると判断し、審決を取り消した。

「そうすると,本願発明において「安否確認」という所期の作用効果を奏するためには,照明装置から発信される「ID番号」と,クラウドサーバに登録された「ID番号」とが,いずれも,照明装置の「設置箇所」を特定し得るID番号でなければならないし,また,照明装置から発信される「ID番号」と,クラウドサーバに登録される「ID番号」とは,これらを相互に対照することによって,どの「設置箇所」において異常が生じているかを検知可能にするものでなければならないと解される。 」

「引用発明の「検出部ID」は,住居内で「電源タップ4」を一意に識別する符号であるものの,引用文献1には,前記「検出部ID」が「電源タップ 4」の設置箇所を表す情報と関連するものであることは一切記載されていな い。また,電源タップの一般的な使用形態を参酌すると,電源タップを住居内のどこに設置してどのような電気機器に接続するかは,当該電源タップを利用する者が任意に決められるものと解される。 
・・・すなわち,「電源タップ4」の「検出部ID」から住居内の設置箇所を識別するためには,「検出部ID」と当該「電源タップ4」の住居内での設置 箇所とを対応付けた何らかの付加的情報が必要である。「電源タップ4」の 「検出部ID」という,電源タップを一意に識別する符号から,当該「電源 タップ4」の設置箇所を識別することができる,と認めることはできない。



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