2021年3月16日火曜日

[AI関連発明]クレーン(特許6737368号)

 (登録例11)クレーン

【請求項1】
  ブームと、
  前記ブームから垂下するワイヤロープと、
  前記ワイヤロープの巻き入れ及び巻き出しによって昇降するフックと、を備えたクレーンにおいて、
  地上に置かれた荷物を撮影するカメラと、
  前記カメラが撮影した荷物の画像に基づいて処理を行うコンピュータと、を具備し、
  前記コンピュータ多階層のニューラルネットワークを用いた人工知能機能を有しており、前記ニューラルネットワークの入力層に荷物の画像を入力すると、前記ニューラルネットワークの出力層から荷物の重心位置を出力するものとされ、
  前記ニューラルネットワークは、ニューロンとニューロンがシナプスで結合された脳神経回路を模しており、仮想荷物を仮想平面に投影した二次元形状情報と前記仮想荷物における重心位置を同じく仮想平面に投影した重心位置情報の組み合わせを学習用データとして前記シナプスに相当する回路の重み付けを調整したものである、ことを特徴とするクレーン。
 
 クレーンで吊った荷物の重心を求める発明である。出願当初クレームは、「前記ニューラルネットワークの入力層に荷物の画像を入力すると、前記ニューラルネットワークの出力層から荷物の重心位置を出力する」としか限定していなかった。
 このため、審査過程において、対象物の画像と当該対象物の重心位置との関連をニューラルネットワークにより推定することは周知技術であるとし、拒絶理由を受けた。
 出願人は、上記下線部の補正を行うとともに、概略、次のような主張をし、特許査定を得た。
 人工知能機能を実現するために不可欠な学習フェーズにおいて、非現実の荷物である仮想荷物の二次元形状情報を用いる点に大きな特徴がある。ヴァーチャル空間上に仮想荷物を作成し、仮想荷物を仮想平面に投影した二次元形状情報および重心位置情報を作成し、更にはこれらを組み合わせた学習用データを作成し、このようにして得られた学習用データを用いて学習を行うことにより初めて本願のいう人工知能機能を発揮する。
 
 本件は、学習に用いる学習データの作成(前処理)に特徴が認められて、特許された例といえる。

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