「情報端末サービスシステム」という名称の特許を保有する個人がサイバーエージェントが運営するアバターコミュニティサービス「アメーバピグ」が特許を侵害するとして訴えた事件の控訴審である。
発明の内容は、仮想モールでキャラクターのパーツを提供し、ユーザは複数のパーツを組み合わせてキャラクターを形成できると共に、パーツの対価を通信料に対して課金するというものである。請求項1は次のとおりである。
【請求項1】
A 表示部と,電話回線網への通信手段とを備える携帯端末から,前記電話回線網に接続されたデータベースにアクセスすることによって,
B 前記データベースに用意された複数のキャラクターから,表示部に表示すべ き気に入ったキャラクターを決定し,その決定したキャラクターを前記表示部にて表示自在となるように構成してある携帯端末サービスシステムであって,
C その決定したキャラクターに応じた情報提供料を通信料に加算する課金手段を備え,
D 前記キャラクターが,複数のパーツを組み合わせて形成するように構成して あり,
E 気に入ったキャラクターを決定するにあたって,前記データベースにアクセスすることによって,複数のパーツ毎に準備された複数のパターンから一つのパターンを選択することにより,少なくとも一つ以上のパーツを気に入ったパーツに決 定し,複数のパーツを組み合わせて,気に入ったキャラクターを創作決定する創作決定手段を備え,
F 前記創作決定手段に,前記表示部に仮想モールと,基本パーツを組み合わせ てなる基本キャラクターとを表示させ,
G 前記基本キャラクターが,前記仮想モール中に設けられた店にて前記パーツ を購入することにより,前記パーツ毎に準備された複数のパターンから一つのパターンを決定し,前記基本キャラクターを気に入ったキャラクターに着せ替える操作により,気に入ったキャラクターを創作決定する着せ替え部を備える
H 携帯端末サービスシステム。
(相違点)
被告サービスは、構成要件Cの課金手段と、構成要件F,Gにおける「仮想モール」を備えていないと判断された。被告サービスでは、通信料金に課金する形で「コイン」を発行するが、コインは前払支払い手段であり、アイテムの代金とは別個独立に理解される。
(均等論)
裁判所は、平成28年3月25日の大合議判決の判示にしたがって判断をしている。明細書の記載以外の証拠も参酌して、発明が解決しようとする課題が未解決のままであったとは認められないとして、「従来技術に対する本件発明の貢献の程度は小さいというべきである。」と判断した。
ここでは、課金手段に関する裁判所の認定を取り上げる。
c キャラクター画像情報に対する課金方法について
本件特許出願日以前に,キャラクター画像情報に対する課金方法として,携帯端末自体を改めて販売する態様ではないもの,すなわち,毎月100円を支払うことにより携帯電話機へ毎日異なるキャラクタ画面データを配信するiモード上での上記サービス「いつでもキャラっぱ!」が公知であったこと(乙6),及びiモードにおいてはコンテンツプロバイダー(情報提供者)がコンテンツの情報料をNTTドコモから携帯電話の通信料と合わせて課金し得るシステムが採用されていたこと(乙9)が認められる。このことに鑑みれば,本件特許出願日において,「サービス提供者にとっても,…キャラクター画像情報を更新するには,携帯端末自体を改めて販売するしかない」ため「キャラクター画像情報により効率良く利益を得るのは困難であった。」(本件明細書【0003】)との課題が未解決のままであったとは認められない。
上記判断によれば、「いつでもキャラっぱ!」は定額の100円を支払うことによりキャラクタの画面データが配信されるものであり、通信料に課金されるのは「その決定したキャラクターに応じた情報提供料」(構成要件C)とはやや異なる感じがする。
別の構成である仮想モールに関しても、裁判所の判示からは、アイテムを購入するための仮想モールが存在したのかどうかは不明である。
そうすると、従来技術に対する貢献を判断する場合には、進歩性判断とは異なり、必ずしも進歩性なしと言えない場合でも、従来技術に対する貢献は小さいと判断されるように思われる。
平成29年(ネ)第10096号
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