2021年8月14日土曜日

[均等論]人脈関係登録システム(知財高裁令和元年9月11日)

  人脈関係登録システムという名称の特許を保有する株式会社メキキがDMM GAMESを訴えた事件である。発明は通信ネットワーク上で人脈関係を結ぶためのシステムに関するものであり、簡単にいうと、①友だちになりたい人に対して友だち申請を出して、OKされれば友だちになれることと、②友だちの友だちを検索する機能を有し、友だちの友だちに対して友だち申請を出せることを規定している。請求項1は次のとおりである。

1A 登録者の端末と通信ネットワークを介して接続したサーバであって, 
1B 人間関係を結ぶことを希望している旨の第一のメッセージと人間関係を結ぶことに合意する旨の第二のメッセージとを交換した登録者同士の個人情報を記憶している記憶手段と, 
1C 第一の登録者が第二の登録者と人間関係を結ぶことを希望している旨の 第一のメッセージを第一の登録者の端末(以下,「第一の端末」という)から受信して第二の登録者の端末(以下,「第二の端末」という)に送信すると共 に,第二の登録者が第一の登録者と人間関係を結ぶことに合意する旨の第二のメッセージを第二の端末から受信して第一の端末に送信する手段と, 
1D 上記第二のメッセージを送信したとき,上記第一の登録者の個人情報と第 二の登録者の個人情報とを関連付けて上記記憶手段に記憶する手段と, 
1E 上記第二の登録者の個人情報を含む検索キーワードを上記第一の端末から受信する手段と, 
1F 上記受信した第二の登録者の個人情報と関連付けて記憶されている第二の登録者と人間関係を結んでいる登録者(以下,「第三の登録者」という)の 個人情報を上記記憶手段から検索する手段と, 
1G 上記検索された第三の登録者の個人情報を第一の端末に送信する手段と, 
1H 上記第一の登録者が上記第三の登録者と人間関係を結ぶことを希望している旨の第一のメッセージを上記第一の端末から受信して上記第三の登録 者の端末(以下,「第三の端末」という)に送信すると共に,第三の登録者が 第一の登録者と人間関係を結ぶことに合意する旨の第二のメッセージを第三の端末から受信して第一の端末に送信したとき,上記記憶手段に記憶されている上記第一の登録者の個人情報と上記第三の登録者の個人情報とを関連付ける手段と, 
1I を有してなることを特徴とする人脈関係登録サーバ。 

(相違点)
 裁判所は、被告サービスが構成要件Dを充足しないと判断した。理由は、第二のメッセージ(=友だち申請に合意するメッセージ)を「送信したとき」とは、送信したことを条件として、又は送信した後で、ということを規定していると述べた上、被告サービスでは、第二のメッセージの送信前に友だちであることが記憶されているからであるというものである。

(均等論)
 均等論についてであるが、裁判所は、平成28年3月25日の大合議判決の判示にしたがって判断をしている。すなわち、明細書に記載されていない従来技術も参照した上で、本件特許の従来技術に対する貢献は大きくないから、「従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する部分については、本件各発明の特許請求の範囲とほぼ同義のものとして認定するのが相当である。」として均等を認めなかった。本質的部分が特許請求の範囲と同義と判断された場合、均等は一切認められないことになる。
 
 本件の判示で注意すべきは、本質的部分の判断においては、請求項から把握される発明の従来技術に対する貢献の程度を見ており、相違点であると判断した構成要件Dがどうこうということは言っていないことである。本質的部分の認定に際しては、相違点のことはいったん措いて、発明の進歩性を判断するようなことになっており、進歩性がなければ、貢献は小さいので均等を認めない、というようなロジックに感じられる。

(知財高裁 平成30年(ネ)10071)

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