2021年4月7日水曜日

[裁判例]学習用具事件(大阪地裁令和3年3月25日)

 七田式で知られる株式会社しちだ・教育研究所が、「歌って覚えるゴロゴロイメージ都道府県」というDVD-ROMが、被告が保有する学習用具の特許を侵害しないことの確認を求めた差止請求権不存在確認請求事件である。
 対象の特許の内容は以下のとおりである。

A コンピューターを備え,対応する語句が存在する原画の形態を該語句と結びつけて憶えるための学習用具であり, 
B 前記コンピューターが, 
 B1 前記原画,該原画の輪郭に似た若しくは該原画を連想させる輪郭を有し対応する語句が存在する第一の関連画,並びに,該原画及び第一の関連画に似た若し くは該原画及び第一の関連画を連想させる輪郭を有し対応する語句が存在する第二の関連画,から成る組画の画像データが,複数個記録された組画記録媒体と, 
 B2 前記組画記録媒体に記録された複数個の組画の画像データから,一の組画の画像データを選択する画像選択手段と, 
 B3 前記選択された組画の画像データにより,前記第一の関連画,前記第二の 関連画,及び前記原画の順に表示する画像表示手段と, 
 B4 前記関連画及び原画に対応する語句の音声データが記録された音声記録媒体と, 
 B5 前記音声記録媒体から,前記語句の音声データを選択する音声選択手段と, 
 B6 前記選択された語句の音声データを再生する音声再生手段と,を含み, 
C 前記画像表示手段が,前記第一の関連画,前記第二の関連画,及び前記原 画を,対応する語句の再生と同期して表示する
D 学習用具。 

 「第一の関連画」「第ニの関連画」と言われてもピンとこないが、次のような画像である。

 例えば都道府県の形状を連想させる画像を用意し、画像に対応する語句と共に頭に入れることで、その形状を記憶させやすくするというものである。
 原告が販売する「歌って覚える~」の広告動画を見たところ、都道府県の形状をとても覚えやすい優れもの、だが、一見して侵害しているように思え、不存在確認訴訟を起こした原告の真意を図りかねた。
 
 裁判所は、構成要件B2の画像選択手段以外は、構成要件を充足していると判断した。画像選択手段については、二つ以上の組画の画像データを同時に選択することしかできない構成は、構成要件B2を充足しないという解釈を示した上で、原告製品は個々の都道府県単位で組画を選択することができないから、文言上は、構成要件を充足しないと判断した。
 しかし、対象特許の本質的部分は、「組画の1単位として,原画,該原画の輪郭に似た 若しくは該原画を連想させる輪郭を有し対応する語句が存在する第一の関連画,並 びに該原画及び第一の関連画に似た若しくは該原画及び第一の関連画を連想させる輪郭を有し対応する語句が存在する第二の関連画から成る組画を組画記録媒体に記録する点,画像表示手段に表示するに際し,前記第一の関連画,前記第二の関連 画,及び前記原画の順に表示する点,第一の関連画に対応する語句,第二の関連画に対応する語句,原画に対応する語句から成る語句の音声データを,音声記録媒体に記録し,音声再生手段で再生し,前記画像表示手段が前記第一の関連画,前記第二の関連画,及び前記原画を対応する語句の再生と同期して表示する点」であるとし、均等論による侵害を認めた。

(参考URL)
 

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