2021年4月4日日曜日

[AI関連発明]人工知能モジュール開発方法(特開2019-003603)

 (拒絶例5)
【請求項1】
  1)解析目的を選択させるステップと、
  2)前記解析目的に必要なデータを登録させるステップと、
  3)前記解析目的を達成する目標を設定させるステップと、
  4)前記登録されたデータを用いて前記解析目的及び前記目標に適合する学習の実行を指示させるステップと、
  5)前記学習の結果として求められた人工知能モジュールを確認させるステップと、
  6)前記確認された人工知能モジュールを含む学習結果を他の装置に組み込むことを指示させるステップと
  をを順次実行する人工知能モジュール開発方法。
  
  



 引用文献1には、画像認識システムの画面において、認識対象の画像(本願の「データ」に相当する)の選択、画像に対するタグ(本願の「目標」に相当する)の付与、学習ボタンのクリックを受け付け、学習後の認識エンジンを用いた認識結果の確認を行うことが記載されている。引用文献1には、1)解析目的を選択させるステップはない。
 引用文献2には、ニューラルネット構築支援システムが、ニューラルネットの利用目的の入力をユーザから受け付け、当該利用目的に応じた学習を行うことが記載されている。

 出願人は、請求項1に「順次実行する」という要件を追加して、各ステップの時系列を特定した上で、引用文献2に記載された発明は、データを入力し、その後、利用目的を入力するものであるから、本願発明と構成が異なると主張した。

 これに対し、審査官は次のように述べて拒絶した。
 本願出願時の技術常識に照らせば、データと利用目的との間に、その入力順に依存した関係はなく、学習処理の開始までに両者が入力されるものであれば、各々の入力画面の表示順をどのような順番にするかは、画面設計上の選択事項にすぎないので、引用文献2に記載された発明の、利用目的を入力する手順を、引用文献1に記載された発明の、画像の選択を行う手順の前に追加するようにすることも、当業者にとって容易であるので、出願人の上記主 張も採用することができない。
 本件は、引用文献どうしを単純に組み合わせると、出願発明とは表示の順番が異なるだけであったため設計事項とされた。

 なお、ステップ3)の目標の設定が、目的があることを前提としてそれに応じた目標を設定するというような請求項の文言にすれば話が違ったような気もするが、「前記解析目的を達成する目標を設定させる」というだけでは、目的を達成するように人間が考えた目標を設定しているだけとも解され、設計事項と言われても仕方がない。
 順番が異なるという相違点だけでは、進歩性が認められなかった例である。




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