2021年4月3日土曜日

[AI関連発明]デプス画像にラベルを付与するプログラム(特許6719168)

 (登録例27)
 教師データを作成するプログラムに関する発明である。教師データに対するラベルの付与を人手で行うことは大変である。本発明は、3Dモデルに予めラベルを付与しておき、3Dモデルを仮想カメラで撮影してデプス画像を生成し、生成したデプス画像にラベルを付与するというものである。

【請求項1】
  正弦波の位相のずれを用いたTOF(Time Of Flight)型の実用デプスカメラによって撮影されたデプス(depth)画像にラベルを付与(Annotation)する機械学習エンジンにおける教師データを生成するようにコンピュータを機能させるプログラムであって、
  3D(three-Dimensional)モデルに、ラベルが予め付与されており、
  3DCG(3D Computer Graphics)ソフトウェアを用いて、3次元空間上に、3Dモデルと、当該3Dモデルを撮影する仮想カメラとを配置する仮想配置手段と、
  1視点の仮想カメラから、当該3Dモデルを異なるタイミングで撮影した複数の仮想画像を生成するレンダリング手段と、
  生成された複数の仮想画像から、正弦波の位相のずれに基づいて仮想カメラからのデプス画像を作成するデプス画像作成手段と、
  作成されたデプス画像に、当該3Dモデルのラベルを付与するアノテーション手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項2】
  視差による三角測量を用いたステレオ型の実用デプスカメラによって撮影されたデプス画像にラベルを付与する機械学習エンジンにおける教師データを生成するようにコンピュータを機能させるプログラムであって、
  3Dモデルに、ラベルが予め付与されており、
  3DCGソフトウェアを用いて、3次元空間上に、3Dモデルと、当該3Dモデルを撮
影する仮想カメラとを配置する仮想配置手段と、
  2視点の仮想カメラそれぞれから、当該3Dモデルを撮影した複数の仮想画像を生成するレンダリング手段と、
  生成された複数の仮想画像から、ステレオ視差原理に基づいて仮想カメラからデプス画像を作成するデプス画像作成手段と、
  作成されたデプス画像に、当該3Dモデルのラベルを付与するアノテーション手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。

 審査の過程では、出願当初の請求項1等に対して引用文献1が示された。引用文献1には、「仮想カメラ24から物体を見た様子を表す、深さ情報に関連付けられた二次元画像28が学習データとして用いられてもよい。」との記載があり、単に、仮想カメラでデプス画像を撮影し、教師データを生成するというだけでは、進歩性がないと判断された。

 出願人は拒絶理由の発見されていない請求項8,9に限定して特許を取得した。請求項1では、正弦波の位置ずれを用いたカメラで異なるタイミングで撮影したデプス画像を生成すること、請求項2では2視点カメラで撮影した仮想画像のステレオ視差原理を用いてデプス画像を生成すること、が具体的に規定された。
 本件は、教師データの具体的な生成方法を特定することで、特許査定を得た例である。

 

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