2020年4月10日金曜日

令和元年意匠法改正


意匠法改正のポイントは関連意匠や存続期間など多岐にわたるが、ICTとの関係では、物品を離れた「画像」が意匠法上の意匠に該当することになったことが挙げられる。改正前は、画像は、物品の部分としての画像であることが必要であったが、改正法では、画像自体を意匠法による保護対象とすることができるようになった。情報処理で用いられる画像を意匠として保護することができる可能性がある。
条文では「機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるもの」と規定されている。具体例を見れば分かりやすいので、審査基準より具体例を抜粋する。

なお、画像自体が保護対象になったといっても、画像の具体的な用途を「意匠に係る物品」の欄にて明確に特定する必要がある。

2020年4月3日金曜日

アプリケーション生成支援システム事件(知財高裁 令和元年9月19日)

拒絶審決に対する審決取消訴訟である。対象の特許は、前記携帯通信端末において実行されるアプリケーションの生成を支援するシステムに関する発明である。引用発明との相違点は、簡単にいえば、本願発明が、携帯通信端末に固有のネイティブ機能を実行させるアプリケーションであるのに対し、引用発明で生成されるアプリケーションは、ネイティブ機能を実行させるものではない点である。

引用発明は、CMS(コンテンツマネジメントシステム)で構築されるアプリケーションがウェブサイトとして構築されるという課題に対し、同等の機能を有するネイティブアプリケーションを容易に生成できるようにしたものである。

裁判所は、引用発明のこの課題に着目し、(被告が主張する周知技術が存在したとしても)動作を行わないウェブアプリケーションの表示内容を表示するネイティブアプリケーションを生成しようとする場合、携帯通信端末の動きに伴う動作を行うようにすることはないと判断した。引用発明の課題に着目して引例どうしの組合せについて動機付けがないという判断をするのは一つの公式である。

なお、裁判所は、阻害事由があるとも述べている。引用発明は、簡易にネイティブアプリケーションを生成することを課題としているから、新たにソースを書くような面倒なことはしないというものであり、もしソースを書こうと思えば書くこともできるから、技術的には阻害されていないのではないかと思われる。


2020年3月16日月曜日

[裁判例]内在する課題に基づき組み合わせ容易との原告主張を退けた例(知財高裁 令和2年2月19日)

無効審判の請求不成立審決に対する審決取消訴訟である。対象の特許は、動画にコメントを入れる機能に関し、ユーザから入力されたコメントが重ならないように表示する発明である。具体的な構成としては、第1のコメントと第2のコメントが重なるか否かを判定し、重なると判定された場合には、コメント同士が重ならない位置に表示する制御を行う。

これに対し、主引例である甲1号証は、ライブ配信を行うライブ配信サーバの発明であり、コメントを入力し、リアルタイムでチャット等をすることができる。ただし、この発明では、ライブ配信者がレイアウト(領域)ごとに配信制限をかけたり、閲覧者が閲覧したいレイアウトを選択することができる。

   
原告の主張は、甲1発明では、原告が、発言が重なり視認性が低下するという課題が内在しているところ、文字列情報が重なるか否かを判定し、文字列情報同士が重なると判定された場合に重ならない位置に表示させるように制御する技術は慣用技術であるから、これを適用することにより、容易に発明をすることができたというものである。
裁判所は、以下のとおり、原告の主張を排斥し、進歩性を肯定した。
「そうすると,甲1発明は,ライブ配信サーバとライブ閲覧者端末とが通信ネット ワークを介して接続されて構成されるライブ配信システムに関する発明であるのに対して,甲2及び3に記載された技術事項は,テレビの文字放送の受信機の技術であるから,両者は,その前提となるシステムが異なる。 
 また,甲1発明と甲2及び3に記載された技術事項とは,文字を表示する点では共通するものの,表示される文字は,甲1発明では,ライブ閲覧者が入力するチャット文であるのに対し,甲2及び3に記載された技術事項は,メインのテレビ放送の映像に含まれる文字と文字放送の文字であるから,対象とする文字が異なる。
 したがって,甲1発明と甲2及び3に記載された技術とは,技術が大きく異なるといえるのであり,プログラミングに関するものであることや動画と文字情報を配信するものであるということ,文字と文字の重なり合いが生じないようにする技術であることだけでは,甲1発明に甲2及び3に記載された技術を適用する動機付けがあると認めることはできないから甲1発明に甲2及び3に記載された技術を適用して本件特許発明1を容易に発明することができたとはいえない。  」


「以上のとおり,甲1発明において,ライブ配信者は,レイアウト(領域)ごとの人数の制限や,レイアウト(領域)ごとの閲覧者の指定による制限を行うことができ,ライブ閲覧者は,閲覧するレイアウト(領域)のみを選択して閲覧が可能であるから,同一の画面に無制限に多数の発言が書き込まれることが当然に予想されるとはいえない。・・・そして,甲1には,同一の画面上で多数の発言が重なって視認性が低下することについて記載されておらず,そのことを示唆する記載があるとも認められない。」
「キ 原告は,甲1発明と甲2等技術は,視認性の低下という課題が共通すると主張するが,前記のとおり,甲1発明は視認性の低下という課題を有しないため,甲1発明と甲2等技術が課題において共通するとは認められない。」

 このように、副引例の技術が慣用技術であっても、主引用発明に適用することが容易ではない場合がある。

2020年3月9日月曜日

AIの学習データを保護 特許庁、21年法改正めざす  ~日本経済新聞~


日本経済新聞によれば、
「特許庁はAI開発や3Dプリンターでの革新的な製造に欠かせないデータ群である「データセット」を差し止めが可能な対象に加える方針だ。「特徴ある方法で生み出したデータ」などを保護対象に含める方向で、2021年の特許法改正をめざす。」
とのこと。
データセットは、ディープラーニングにおいて、学習済みモデルの精度に影響を与える大きなファクターである。これを特許で保護できれば、画期的である。
しかし、「特徴ある方法で生み出したデータ」ということであれば、現行法下でも、「特徴ある方法」は特許の対象であり、それによって生産されたデータもまた保護の対象となるわけだから、今とそんなに変わらない気がする。
どのような切り口でデータセットを保護対象とするのか、興味深い。世界に例を見ない試みに期待したい。

2020年2月25日火曜日


ベッド操作装置事件(知財高裁 令和元年10月2日)


 本願発明と引用発明とで記載された課題は異なるものの同一と判断された例である。
従来のベッド操作装置は、安全性のため、利用者は一度電源ボタンを操作しなければならず、その都度電源ボタンの位置を探し、電源ボタンを操作するという余計な操作を利用者に強いてしまうという課題があった。本願発明は、電源が入っている状態で、直ちに操作可能とはせず、いったん何らかの操作をさせて初めて、アクチュエータを駆動し得る状態にした。
これに対し、引用発明は、電源を投入したときにリモコンキーの上に物が誤って置かれていると、不意にアクチュエータが作動してしまい、危険であるという課題に鑑み、電源を投入した際、リモコンの任意のキーが押され、このキーを解放した後にアクチュエータを起動するようにしたものである。

原告は、引例の課題(電源投入前にリモコンに物が置かれた状態の危険)に基づけば、引例からは、電源を投入した後にリモコンのキーが押される発明は把握できないと主張したが、裁判所は、当業者であれば、引例の記載から、電源投入後にリモコンのキー上に物が誤って置かれた場合にも危険性が生じることを理解すると判断した。
本件は、新規性が問題となっている事案であるが、裁判所は、課題に基づいて引用発明が限定的に解釈されることがないということを丁寧に判示している。

2020年2月13日木曜日

ゲームプログラム事件(知財高裁 令和元年6月20日)

 拒絶査定不服審判の請求不成立に対する審決取消訴訟である。本願発明は、第1のプレイヤキャラクタと第2プレイヤキャラクタが対戦をする際に、第1のプレイヤキャラクタの情報及び第2のプレイヤキャラクタの情報に基づいて第3者キャラクタを抽出し、参戦させることで従来にない白熱した対戦ゲームを可能にするものである。これに対し、引用発明は、対戦ゲームにおいて、スコアの低い方(弱い側)のグループ(チーム)を支援する第三者勢力としてのNPCを登場させる。

 同一のレベルのキャラクタを登場させるか(本願発明)、人数を増減させるか(引用発明)という相違点について、複数の種類のキャラクタからレベルに応じたキャラクタを抽出することは周知技術であるとして、裁判所は、原告の請求を棄却した。
 
 原告は、本願発明と引用発明とは課題が異なると主張したが、裁判所は、引用発明1と周知技術Aとは従来技術の課題の共通性を理由として動機付けられるから、引用発明1に周知技術Aを適用することが困難となるということはできないとした。
 つまり、組み合わせの動機付けには、組み合わせに係る引用発明どうしの課題が問題となるのであって、本願発明との課題の相違は問題とはならない。本願特許出願前の発明に基づいて、本願発明の構成に容易に想到し得たか、というのが進歩性の議論なので、これは妥当な判断といえる。

平成30年(行ケ)10166 (参考URL)088788_hanrei.pdf (courts.go.jp)


2020年2月12日水曜日

中国 特許9分野で首位 ~日本経済新聞~


 今日の日経新聞の一面に、先端10分野のうち9分野において、中国の特許出願数が首位との報道があった。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55092420R30C20A1SHA000/
 件数で比較すれば、それは自然なことだろうと思う。
それよりも、特許の質において、トップ100に米国が64社に対して、日本は18社とは、なぜこうも差があるのだろう。中国も近い将来には質を高めてくることは間違いないので、研究開発のレベルをいっそう高める努力をしていかなければならない。

方法発明の間接侵害が否定された例(令和6年(ワ)第70583号)

  液晶キーボードのキーの背景画像を着せ替える方法に関する特許を有する原告らが、文字入力キーボードアプリ「Simeji」を製造販売するバイドゥ株式会社を訴えた事件である(東京地裁民事第46部・令和8年4月15日判決)。実際に本件各発明に係る方法を使用するのは、被告製品をインストー...