無効審判の請求不成立審決に対する審決取消訴訟である。対象の特許は、動画にコメントを入れる機能に関し、ユーザから入力されたコメントが重ならないように表示する発明である。具体的な構成としては、第1のコメントと第2のコメントが重なるか否かを判定し、重なると判定された場合には、コメント同士が重ならない位置に表示する制御を行う。
これに対し、主引例である甲1号証は、ライブ配信を行うライブ配信サーバの発明であり、コメントを入力し、リアルタイムでチャット等をすることができる。ただし、この発明では、ライブ配信者がレイアウト(領域)ごとに配信制限をかけたり、閲覧者が閲覧したいレイアウトを選択することができる。
原告の主張は、甲1発明では、原告が、発言が重なり視認性が低下するという課題が内在しているところ、文字列情報が重なるか否かを判定し、文字列情報同士が重なると判定された場合に重ならない位置に表示させるように制御する技術は慣用技術であるから、これを適用することにより、容易に発明をすることができたというものである。
裁判所は、以下のとおり、原告の主張を排斥し、進歩性を肯定した。
「そうすると,甲1発明は,ライブ配信サーバとライブ閲覧者端末とが通信ネット ワークを介して接続されて構成されるライブ配信システムに関する発明であるのに対して,甲2及び3に記載された技術事項は,テレビの文字放送の受信機の技術であるから,両者は,その前提となるシステムが異なる。
また,甲1発明と甲2及び3に記載された技術事項とは,文字を表示する点では共通するものの,表示される文字は,甲1発明では,ライブ閲覧者が入力するチャット文であるのに対し,甲2及び3に記載された技術事項は,メインのテレビ放送の映像に含まれる文字と文字放送の文字であるから,対象とする文字が異なる。
したがって,甲1発明と甲2及び3に記載された技術とは,技術が大きく異なるといえるのであり,プログラミングに関するものであることや動画と文字情報を配信するものであるということ,文字と文字の重なり合いが生じないようにする技術であることだけでは,甲1発明に甲2及び3に記載された技術を適用する動機付けがあると認めることはできないから甲1発明に甲2及び3に記載された技術を適用して本件特許発明1を容易に発明することができたとはいえない。 」
「以上のとおり,甲1発明において,ライブ配信者は,レイアウト(領域)ごとの人数の制限や,レイアウト(領域)ごとの閲覧者の指定による制限を行うことができ,ライブ閲覧者は,閲覧するレイアウト(領域)のみを選択して閲覧が可能であるから,同一の画面に無制限に多数の発言が書き込まれることが当然に予想されるとはいえない。・・・そして,甲1には,同一の画面上で多数の発言が重なって視認性が低下することについて記載されておらず,そのことを示唆する記載があるとも認められない。」
「キ 原告は,甲1発明と甲2等技術は,視認性の低下という課題が共通すると主張するが,前記のとおり,甲1発明は視認性の低下という課題を有しないため,甲1発明と甲2等技術が課題において共通するとは認められない。」
このように、副引例の技術が慣用技術であっても、主引用発明に適用することが容易ではない場合がある。
裁判所は、以下のとおり、原告の主張を排斥し、進歩性を肯定した。
「そうすると,甲1発明は,ライブ配信サーバとライブ閲覧者端末とが通信ネット ワークを介して接続されて構成されるライブ配信システムに関する発明であるのに対して,甲2及び3に記載された技術事項は,テレビの文字放送の受信機の技術であるから,両者は,その前提となるシステムが異なる。
また,甲1発明と甲2及び3に記載された技術事項とは,文字を表示する点では共通するものの,表示される文字は,甲1発明では,ライブ閲覧者が入力するチャット文であるのに対し,甲2及び3に記載された技術事項は,メインのテレビ放送の映像に含まれる文字と文字放送の文字であるから,対象とする文字が異なる。
したがって,甲1発明と甲2及び3に記載された技術とは,技術が大きく異なるといえるのであり,プログラミングに関するものであることや動画と文字情報を配信するものであるということ,文字と文字の重なり合いが生じないようにする技術であることだけでは,甲1発明に甲2及び3に記載された技術を適用する動機付けがあると認めることはできないから甲1発明に甲2及び3に記載された技術を適用して本件特許発明1を容易に発明することができたとはいえない。 」
「以上のとおり,甲1発明において,ライブ配信者は,レイアウト(領域)ごとの人数の制限や,レイアウト(領域)ごとの閲覧者の指定による制限を行うことができ,ライブ閲覧者は,閲覧するレイアウト(領域)のみを選択して閲覧が可能であるから,同一の画面に無制限に多数の発言が書き込まれることが当然に予想されるとはいえない。・・・そして,甲1には,同一の画面上で多数の発言が重なって視認性が低下することについて記載されておらず,そのことを示唆する記載があるとも認められない。」
「キ 原告は,甲1発明と甲2等技術は,視認性の低下という課題が共通すると主張するが,前記のとおり,甲1発明は視認性の低下という課題を有しないため,甲1発明と甲2等技術が課題において共通するとは認められない。」
このように、副引例の技術が慣用技術であっても、主引用発明に適用することが容易ではない場合がある。
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