ベッド操作装置事件(知財高裁 令和元年10月2日)
本願発明と引用発明とで記載された課題は異なるものの同一と判断された例である。
従来のベッド操作装置は、安全性のため、利用者は一度電源ボタンを操作しなければならず、その都度電源ボタンの位置を探し、電源ボタンを操作するという余計な操作を利用者に強いてしまうという課題があった。本願発明は、電源が入っている状態で、直ちに操作可能とはせず、いったん何らかの操作をさせて初めて、アクチュエータを駆動し得る状態にした。
これに対し、引用発明は、電源を投入したときにリモコンキーの上に物が誤って置かれていると、不意にアクチュエータが作動してしまい、危険であるという課題に鑑み、電源を投入した際、リモコンの任意のキーが押され、このキーを解放した後にアクチュエータを起動するようにしたものである。
原告は、引例の課題(電源投入前にリモコンに物が置かれた状態の危険)に基づけば、引例からは、電源を投入した後にリモコンのキーが押される発明は把握できないと主張したが、裁判所は、当業者であれば、引例の記載から、電源投入後にリモコンのキー上に物が誤って置かれた場合にも危険性が生じることを理解すると判断した。
本件は、新規性が問題となっている事案であるが、裁判所は、課題に基づいて引用発明が限定的に解釈されることがないということを丁寧に判示している。
0 件のコメント:
コメントを投稿