2026年1月4日日曜日

[裁判例]ふるさと納税の返礼が売買取引ではないとされた例(令和7年(ネ)10046)

 取引管理システムについての特許を有する株式会社キーソフトがふるさと納税に係る返礼品についてのサービスを提供する株式会社サンカクキカクを訴えた裁判の控訴審である。
 対象となった特許は、段階的な複数の取引者間での商品の取引の伝票管理を簡易にすることを目的とする取引管理システムであり以下の構成を有する。

【請求項1】
A 下流取引者からの発注を受け、前記下流取引者を特定するための情報と、前記発注された商品を特定するための情報とに基づき、前記下流取引者から中間取引者へ宛てた第1の発注情報を作成する手段と、 
B 前記中間取引者から上流取引者へ宛てた第2の発注情報を、前記第1の発注情報に基づき前記第1の発注情報の作成と連動して自動的に作成する手段とを含む、 
C 前記下流取引者のコンピュータ、前記中間取引者のコンピュータ、複数の前記上流取引者のコンピュータのそれぞれに、ネットワークを介して接続される取引管理システム。 

 「上流」および「下流」とは、商品の流れに対応し、商品は上流取引者から下流取引者の方向に流通される。発明は、下流取引者から発注があると自動的に上流の取引者に対して発注をする。控訴人(原告)は、下流取引者が寄附者、中間取引者が地方自治体、上流取引者が返礼品を発送する事業体というあてはめをしている。

[裁判所の判断]
 当裁判所も、本件発明における「中間取引者」とは、商品受取者である「下流取引者」及び商品発送者である「上流取引者」という各末端取引者の中間に介在し、「下流取引者」から対象商品の売買について発注を受け、それを踏まえて「上流取引者」に当該商品の売買について発注を行う者を意味するところ、被告システムにおいて、地方団体は、寄附者から特定の商品の売買について発注を受ける者に当たらず、また、これを踏まえて事業者に対して商品の売買についての発注を行う者にも当たらないと判断する。 

 控訴人は、本発明における取引は有償無償を問わないとか、被告システムでは実質的な対価関係が認められるといった主張を試みたが、以下のように排斥された。

[裁判所の判断]
イ 当審における控訴人らの追加的及び補充的主張に対する判断 
(ア) これに対し、控訴人らは、本件発明における「中間取引者」とは、有償無償を問わず「下流取引者」から商品の発注を受ける者をいうとし、この発注行為には、売買契約の申込みの意思表示のみならず、贈与や寄附といった無償行為に係る申込みの意思表示も含まれる旨主張する。 
  しかしながら、本判決で補正の上引用する原判決「事実及び理由」第4の2(1)アのとおり、本件明細書【0008】【0009】【0045】に、「下流取引者」への販売につき、販売価格が設定されることなどが記載されており、他に、贈与や寄附といった無償行為を対象とすると読める記載は存在しない。加えて、本件発明が解決しようとする課題は、前記2(2)で述べたとおり、段階的な複数の取引者間での伝票管理を容易にすることにあるから、本件発明は、商品の対価として金銭のやり取りを伴う取引を対象としていると考えるのが自然である。 
 したがって、控訴人らの上記主張は採用できない。 

(イ) また、控訴人らは、仮に「中間取引者」が「下流取引者」から受ける発注が、売買契約(ないし少なくとも他の有償取引)に係る申込みの意思表示に限られるとしても、ふるさと納税の寄附と返礼品の間には、実質的な対価関係が認められるから有償契約に当たると主張し、ふるさと納税一般において御礼(返礼)の内容が寄附金額に応じて一律に定められていること(甲19)、総務省が地方団体に対し返礼品の返礼割合を3割以下とするように求めていること(甲16)等の事実を挙げる。 
  しかしながら、ふるさと納税制度において、地方団体による寄附者に対する物品の提供は、寄附者に対するいわば御礼(返礼)として行われるものであり、その性質が寄附金と対価関係を有しない無償行為にとどまることは、本判決で補正の上引用する原判決「事実及び理由」第4の2(1)イのとおりである。加えて、ふるさと納税制度を利用して寄附をする者は、地方団体に供与する経済的利益の全額を寄附金控除の対象となる寄附金と認識しているのであり、その全部又は一部を返礼品の対価として支払っていると認識しているとは認められないから(乙1)、控訴人らの主張する事実によって、無償行為である寄附行為としての法的性質が変容するとは評価できない。 
 したがって、控訴人らの上記主張には理由がない。 

(ウ) さらに、控訴人らは、被告システムにおいて、寄附者は地方団体に対して返礼品の発注を行い、当該発注情報に基づき、自動的に事業者に対してメールが送信されるのであるから、被告システムは地方団体の事業者への発注行為を代替しているとみるべきであり、「上流取引者」に当該商品の売買について発注を行う者に該当する旨主張する。 
 しかしながら、本判決で補正の上引用する原判決「事実及び理由」第4の2(1)イのとおり、被告システムにおいては、地方団体が、寄附者からの発注情報を受領した上で、これを踏まえて事業者に対して通知を行う過程は存在しないのであるから、地方団体は、「下流取引者」からの発注を踏まえて「上流取引者」に当該品の売買について発注を行う者には当たらない。 
 したがって、控訴人らの上記主張には理由がない。 

(コメント)
 ふるさと納税の返礼が売買に当たらないことに加え、上記引用の(ウ)の事実があったことは、非侵害に大きく影響したと思われる。
 
 

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