第2の例は、貨物輸送のオファーとデマンドをユーザの現在位置に基づいてマッチングするソフトウェア関連発明である。
「 請求項1
貨物輸送の分野においてオファーと要求を仲介するためのコンピュータで実装された方法であって、以下のステップを含む、方法:
(a)位置及び時間データを含む、ユーザーからの輸送オファー/デマンドを受信するステップ;
(b)ユーザが装備しているGPS端末からユーザの現在位置情報を受信するステップ;
(c)新たなオファー/デマンド要求の受信後、新たな要求に応じることができるまだ満たされていない以前のオファー/デマンドがあるかどうかを確認するステップ;
(d)存在する場合、両ユーザの現在位置が最も近いものを選択するステップと
(e)そうでない場合、新しい要求を保存する。」
課題ー解決アプローチのステップ(ⅰ)は、発明の技術的性質に貢献する特徴を発明の文脈で達成される技術的効果に基づいて決定することであった。
例2においては、発明の技術的性質に貢献する特徴について次のように判断される。
「ステップ(i):請求項の方法の根底には、次のビジネス方法がある。
貨物輸送の分野におけるオファーとデマンドを仲介する方法であって、以下を含む:
位置と時間のデータを含む、ユーザーからの輸送のオファー/デマンドを受け取ること;
利用者の現在位置に関する情報を受信するステップと
新しいオファー/デマンドの受信後、新しい要求に応じることができるまだ満たされていない以前のオファー/デマンドがあるかどうかを確認する;
もしある場合、両ユーザーの現在位置が最も近いものを選択する;
それ以外の場合は、新しいリクエストを保存する。
このようなビジネス方法は、それ自体非技術的であり、法52条(2)(c)及び(3)の下で除外される。オファーとデマンドを仲介することは、典型的なビジネス活動である。利用者の地理的位置を利用することは、輸送仲介業者が、非技術的でビジネス上の考慮のみに基づくビジネス方法の一部として指定することができる種類の基準である。このビジネス方法は、発明の文脈ではいかなる技術的目的も果たさず、したがって、その技術的性質に貢献するものでもない。
したがって、このビジネス方法の技術的実施に関連する特徴のみを、本発明の技術的性質に貢献する特徴として特定することができる。
ビジネス方法ステップは、コンピュータによって実行される。
GPS 端末から現在位置情報を受信する。」
上記のとおり、例2の発明の技術的特徴は、下線を引いた2点だけであり、ビジネス方法自体はすべて捨象されてしまった。
その結果、サーバーコンピュータがGPS端末から位置情報を受信する受注管理方法を開示している文献D1に基づいて、「ビジネス方法ステップを実行するためにD1の方法を適応させることは、簡単であり、ルーチンのプログラミングのみを必要とする。したがって、法52条(1)及び56条にいう進歩性はない。」と一蹴されてしまうことになる。
例1の携帯端末でのショッピングを容易にする方法と例2の貨物輸送のマッチングを行う方法は、いずれもソフトウェア関連発明であるが、例1はサーバーコンピュータと携帯端末からなる分散システムと判断されたのに対し、例2は本質的にビジネス方法というように判断が分かれた。
これは、例2においては、各ステップの主体が特定されていないことが原因ではないかと思われる。ガイドラインの備考においても次のように述べている。
「備考:この例では、ステップ(i)の最初の分析から、クレームされた方法の根底には、オファーとデマンドを仲介する方法があり、それがビジネス方法であることは明らかであった。ビジネス方法を定義する特徴は、そのコンピュータによる実装の技術的特徴から容易に分離可能であった。」
日本では、各ステップの主体が特定されていないと、発明が明確でないとされ、記載要件違反となるが、欧州では進歩性の判断において技術的特徴から分離されて、簡単に進歩性を否定されてしまうことになる。
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