第1の例は、ユーザが購入したい2つ以上の商品を選択すると、ユーザの現在位置に基づき、商品を購入するのに最適なルートを提示するソフトウェア関連発明である。
「請求項1
携帯端末でのショッピングを容易にする方法であって
(a)ユーザが購入したい商品を2つ以上選択するステップと
(b)前記携帯端末は、前記選択された商品データおよび前記端末の位置情報をサーバに送信し、
(c)サーバーは、業者のデータベースにアクセスし、選択された製品の少なくとも1つを提供する業者を特定し、
(d)サーバーは、端末の位置と特定された業者とに基づいて、以前のリクエストに対して決定された最適なショッピングツアーが格納されているキャッシュメモリにアクセスして、選択された商品を購入するための最適なショッピングツアーを決定し、
(e)前記サーバは、前記最適なショッピングツアーを前記携帯端末に送信して表示させる。」
この発明に最も近い先行技術は、1つの商品を選択するとその商品を販売する業者の情報を提供する方法である。
「ユーザーが1つの商品を選択し、サーバーがデータベースからユーザーに最も近い選択された商品を販売している業者を決定し、この情報を携帯端末に送信する携帯端末でのショッピングを容易にする方法を開示している文献D1が最も近い先行技術として選択される。」
この先行技術D1との相違点は、課題ー解決アプローチによって次のように特定される。
「ステップ(iii):請求項1の主題とD1との相違点は、以下の通りである。
(1)ユーザは、(単一商品のみではなく)2つ以上の商品を選択して購入することができる。
(2)2つ以上の製品を購入するための「最適なショッピングツアー」がユーザーに提供される。
(3)最適なショッピングツアーは、サーバーが、過去のリクエストに対して決定された最適なショッピングツアーが格納されているキャッシュメモリにアクセスして決定する。
相違点(1)及び(2)は、その商品を売っているお店の順番を決めるという、ビジネスの基本的な考え方の変更である。技術的な目的はなく、これらの相違点から技術的な効果を見出すことはできない。したがって、これらの機能は D1 に対して技術的な貢献を構成しない。
一方、相違点(3)は、相違点(1)及び(2)の技術的実現に関連するものであり、キャッシュメモリに格納された過去の要求にアクセスすることにより、最適な買い物ツアーを迅速に決定できるという技術的効果を有するので、技術的貢献をするものである。
ステップ(iii)(c):客観的な技術課題は、当業者が技術分野の専門家としての立場から定式化するものである(G-VII,3)。このような者は、ビジネスに関する専門知識を有しているとは認められない。本件では、当業者は、解決すべき技術的課題の定式化の一環として、(要求仕様書という現実的な状況で)ビジネス関連の特徴(1)、(2)に関する知識を得る情報技術の専門家と定義することができる。このように、満たすべき制約として与えられる相違点 (1)及び (2) によって定義される非技術的なビジネス概念を、技術的に効率よく実現するために、D1 の方法をどのように変更するかということが、客観的な技術課題として定式化される。」
この例では、ユーザに2つの商品を選択させ、その2つの商品を購入する最適ルートを提供するというビジネス上のアイデアは、特許性の議論においては評価の対象外である。2つの商品を購入する最適ルートを提供するという仕様がビジネス部門から与えられたときに、文献D1の技術を変更して実現することが自明であったかどうかが問題となる。その結果、次のように判断されると説明されている。
「第2の文書D2は、訪問すべき場所のセットをリストアップして旅行計画を決定する旅行計画システムを開示し、この技術的問題に対処している:D2のシステムは、この目的のために、以前のクエリの結果を格納するキャッシュ・メモリにアクセスする。したがって、当業者は、D2の教示を考慮し、最適な買い物ツアーの決定の技術的に効率的な実施、すなわち相違点(3)を提供するように、D1のサーバをD2で提案されているようにキャッシュメモリにアクセスし使用するよう適合させたと考えられる。」
日本の審査では、その2つの商品を購入する最適ルートを提供するというアイデアが新しければ、例えばD2の旅行計画をヒントにショッピングツアーに基づいて対象の発明に想到し得たかどうか、が進歩性判断の材料になるであろう。これは、実務上の大きな違いである。
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