2022年4月6日水曜日

[EP] 技術的特徴と非技術的特徴からなるクレーム (審査ガイドライン)

EPの審査ガイドラインは、技術的特徴と非技術的特徴からなるクレーム(以下「混合型発明」という)の進歩性の考え方について規定している。
PartG-Patentability/ Chapter VII-Inventive step/ 5.Problem-solution approach/ 5.4 Claims comprising technical and non-technical features 
(https://www.epo.org/law-practice/legal-texts/html/guidelines/e/g_vii_5_4.htm)

※翻訳は筆者による
「コンピュータで実装された発明によく見られるように、クレーム中に技術的特徴と非技術的特徴が混在することは適法である。非技術的特徴がクレームの主題の主要な部分を形成することさえある。しかし、法52条1項、2項、3項に照らすと、法56条の進歩性が存在するために、技術的課題に対する非自明な技術的解決策を必要とする(T 641/00, T 1784/06)。

 このような混合型発明の進歩性を評価する際には、発明の技術的性質に貢献するすべての特徴が考慮される。これらの特徴には、単独では非技術的であるが、発明の文脈上、技術的目的に資する技術的効果の発生に寄与し、それによって発明の技術的特徴に貢献する特徴も含まれる。しかし、発明の技術的性質に貢献しない特徴は、進歩性の存在を裏付けることはできない(「COMVIKアプローチ」、T 641/00, G 1/19) 。このような状況は、例えば、特徴が非技術的な課題の解決にのみ貢献する場合、例えば、特許性から除外される分野の課題の解決にのみ貢献する場合に生じ得る(G-II,3及びサブセクションを参照)。

 問題解決アプローチは、発明の技術的性質に寄与しない特徴に基づいて進歩性が認められることがないように、また、寄与するすべての特徴が適切に識別され、評価において考慮されるように、混合型発明に対して適用される。このため、クレームが非技術分野で達成されるべき目的に言及している場合、この目的は、解決すべき技術的課題の枠組みの一部として、特に満たされなければならない制約として、合法的に客観的な技術的課題の定式化に現れることができる(T 641/00;下記ステップ(iii)(c)及び G-VII, 5.4.1 を参照)。

 以下のステップは、COMVIKアプローチによる混合型発明への問題解決アプローチの適用を概説する。
(i)発明の技術的性質に貢献する特徴は、発明の文脈で達成される技術的効果に基づいて決定される(G-II,3.1~3.7参照)。
(ii)ステップ(i)で特定した発明の技術的性質に貢献する特徴に着目して、最も近い先行技術として適切な出発点を選択する(G-VII, 5.1参照)。
(iii)最も近い先行技術との相違点を特定する。これらの相違点から、技術的貢献をする特徴としない特徴を識別するために、請求項全体との関係において、これらの相違点の技術的効果が判断される。
 (a)相違点がない場合(非技術的な相違点もない場合)、法54条に基づく拒絶理由が提起される。
 (b)相違点に技術的な貢献がない場合、法 56条に基づく拒絶理由が提起される。拒絶理由は、先行技術に対する技術的貢献がない場合、請求項の主題は進歩性を有しない、というものである。
 (c)相違点に技術的貢献をする特徴が含まれる場合は、次のようになる。
 客観的な技術的課題は、これらの特徴によって達成される技術的効果に基づいて定式化される。さらに、相違点が技術的貢献のない特徴を含む場合、これらの特徴又は発明によって達成された非技術的効果は、当業者に「与えられた」ものの一部として、特に満たさなければならない制約として、客観的技術課題の定式化に用いることができる(G-VII, 5.4.1 参照)。
 客観的技術的課題に対するクレームされた技術的解決策が当業者にとって自明である場合、法56条の下での拒絶理由が提起される。」


 混合型発明に対する基本的な考え方は、「技術的性質に貢献しない特徴は、進歩性の存在を裏付けることができない」であり、進歩性の審査においては技術的側面だけが評価の対象となる。
 課題ー解決アプローチにおいて、最も近い先行技術との相違点に技術的貢献のない特徴を含む場合、その特徴と非技術的効果は、当業者に与えられる「満たさなければならない制約」として、客観的な技術的課題に組み込まれる。進歩性を判断するに際しては、要求仕様が「与えられた」当業者が、技術的課題を技術的に解決することが自明かどうかが判断の基準となる。
 したがって、非技術的な部分がいかに画期的でも、その画期的な部分は、客観的技術的課題として与えられてしまうため、その部分は何ら評価されない。このことは、ガイドラインが列挙している事例を見るといっそう理解できる(つづく)。



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