2021年4月29日木曜日

[US]IPRの審理開始について

 米国の当事者系レビュー制度(IPR)の審理を開始するかどうかは、長官の裁量によることが、米国特許法314条(a)に規定されている。

「長官が,第 311 条に基づいて提出された請願及び第 313 条に基づいて提出された応答におい て提示されている情報により,請願において異議申立されているクレームの少なくとも 1 に 関して請願人が勝訴すると思われる合理的な見込みがあることが証明されていると決定する場合を除き,長官は,当事者系再審査の開始を許可することができない。 」
(特許庁/外国知的財産情報より)

 この規定は、請願に理由がありそうかどうか、ということを言っているが、それだけではないようである。IPRの対象の特許に関し、侵害訴訟が並行しているときには、IPRが開始されない場合がある。
 Apple Inc. v. Fintiv, Inc. IPR 2020-00019の事件において、IPRの開始についてPTABが考慮すべき事項が6つ示されている(Finitiv基準)。そのうちの一つが、PTABによる決定期限と裁判所の公判日の近さである。IPRの提起が遅れると、審理を開始してもらえない可能性があるので要注意である。
 なお、UnifiedPatentの記事(下記URL参照)によると、228件もの請願が審理を開始してもらえず、そのうちの62%がFinitiv基準によるものだそうである。


2021年4月16日金曜日

[記事]利益相反について

(ポイント) 以下は、原審(令和2年(ラ)10004)の判決文からの情報も含む。

・利益相反に関する最高裁判決である。関係条文は次のとおり。
[弁護士法]
第二十五条 弁護士は、次に掲げる事件については、その職務を行つてはならない。ただし、第三号及び第九号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りでない。
一 相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件

[弁護士職務基本規程]
第五十七条 所属弁護士は、他の所属弁護士(所属弁護士であった場合を含む)が、第二十七条又は第二十八条の規定により職務を行い 得ない事件については、職務を行ってはならない。ただし、職務の公正を保ち得る事由があるときは、この限りでない。

・事実関係
 塩野義製薬 vs 米ギリアドサイエンシズの特許侵害訴訟の関係である。塩野義製薬で上記訴訟の準備に深く関わったC弁護士が、ギリアドの代理人A弁護士,B弁護士の事務所に転職した。なお、C弁護士は、1か月余りで退職した。
 なお、ギリアドの主張としては、C弁護士に秘密漏洩なきことを誓約させるほか、A弁護士,B弁護士とC弁護士との間で十分な情報遮断措置をとっていたから、弁護士職務基本規程57条に定める「職務の公正を保ち得る事由がある」というものである。

・原審(知財高裁)
 「職務の公正を保ち得る事由」の意義は、「依頼者の信頼が損なわれるおそれがなく,かつ,先に他の所属弁護士(所属 弁護士であった場合を含む。)を信頼して協議又は依頼をした当事者にと って所属弁護士の職務の公正らしさが保持されているものと認められる事由をいうものと解するのが相当である。」とした上で、本件訴訟は利害の対立が大きい事件であり、C弁護士が訴訟準備の中心的役割を担っていたことや、C弁護士の転職と時期を同じくして事件の代理人がD弁護士からA弁護士らに代わったことからすると、塩野義にとって、「A弁護士らが基本事件の相手方の訴訟代理人として職務を行うことについて,その職務の公正らしさに対する強い疑念を生じさせるものであるものと認められる。」として、塩野義の主張を認めた。

・最高裁の判断
 同僚に利益相反を抱える弁護士がいたとしても、これを「具体的に禁止する法律は見当たらない」として、排除の申立て自体ができないと判断した。

 「具体的に禁止する法律は見当たらない」というのは、弁護士職務基本規程には同僚についての禁止規定があるが、弁護士法には規定がないということなのだろう。つまり、日弁連の会規にしたがって罰せられることはあっても、裁判で強制的に排除することはできないということと理解される。
 記事によれば、「いかなる条件で関与が禁止、容認されるのかを具体的な規則で規律することは日弁連に託された喫緊の課題の一つだ」とする補足意見をつけたとあるので、最高裁は利益相反についてきちんとしたルールが必要と考えているようである。

(参考URL)

2021年4月12日月曜日

[記事]Microsoftが音声認識技術のニュアンスを買収

 (ポイント)
・ニュアンスは、音声認識技術を手掛ける米国企業。Siriの基礎技術の開発で知られる。
・ニュアンスは、音声認識で2700の特許を保有。
・Microsoftとニュアンスは、医療分野のAI活用で1年半にわたり協業してきた。
・Microsoftは買収により、ヘルスケア分野のクラウドサービス強化が狙い。
・買収の規模は、197億ドル。
・反トラスト法に抵触するかの審査はこれから。

(出典)

2021年4月11日日曜日

[記事]特許権の差止制限については引き続き検討

  2020年4月に「IoT普及へ特許制限を検討」という記事を取り上げたが、産構審の特許制度小委員会の中間とりまとめ(2020年7月10日)を見ると、引き続き検討ということになっている。

 差止請求権の行使は権利濫用の範囲内で制限されるべきことについては、意見の一致を見たが、どのような場合に権利濫用になるかはケースバイケースでの判断が適当であることや、差止請求権の制限の明文化が特許権を弱めるというメッセージにつながったり、権利濫用の考慮要素を狭めるということが考慮された。

(産構審資料)


2021年4月10日土曜日

[AI関連発明]情報処理装置(特許6722929)

 (登録例)
 発明は、帳票の画像からテキストデータを読み取る学習モデルを生成するためのデータセットを生成し、当該データセットを用いて機械学習を行う装置に関する。

【請求項1】
  文字情報を含む画像データから前記文字情報を読み取り、読み取った前記文字情報の前記画像データにおける位置について推定するための学習モデルに関する機械学習を行う情報処理装置であって、
  前記画像データを取得する画像データ取得部と、
  前記画像データに含まれる前記文字情報の位置を識別し、読取項目として認識する読取項目認識部と、
  読取項目における前記文字情報の文字認識を行い、テキストデータを生成するテキストデータ生成部と、
  前記テキストデータと、あらかじめ記憶されている前記画像データに含まれる前記文字情報を示す正解テキストデータとを読取項目ごとに比較し、一致しているか否かの判定を行い、一致していると判定された前記テキストデータを前記画像データ単位で抽出する正解データ抽出部と、
  抽出された前記テキストデータと、抽出された前記テキストデータの基になる前記画像データにおける読取項目の位置とに基づいて機械学習を行い、前記学習モデルの生成または更新を行う学習部と、を備え、
  前記正解データ抽出部は、前記テキストデータと前記正解テキストデータとを比較して前記テキストデータの合致度を算出し、算出した合致度が所定の閾値以上の場合、前記テキストデータと前記正解テキストデータとが一致していると判定する、情報処理装置。

 発明のポイントは、画像データをOCRで読み取り、その読取りの精度が高かった正解データのセット(画像データとテキストデータ)のみを学習に用いる点である。
 出願人は、意見書において、引用文献1は、「OCR処理に成功した場合、失敗した場合のいずれも機械学習を行うことで、文書帳票の書式の統計的な情報を反映させ、過学習を防止するものです。」と述べ、「一致している帳票のテキストデータのみを機械学習の対象とするために抽出する構成を付加することは、その目的に反するものであり、阻害要因を有します。」と主張した。
 
 補正に関していうと、画像データ単位で正解データを抽出するという構成を加えた。引用文献1に記載の画像処理装置は、「項目単位で一致/不一致の判定を行い、一致していない場合には、確認画面をモニタに出力し、作業者の入力により確認を行う構成」であることから、画像単位では正解データを抽出しないということを言いたいようである。
 
 本件は、発明の目的の違いに起因する構成の違いを請求項に反映させることにより、特許査定を得た例と言える。
 

2021年4月9日金曜日

[記事]ドコモの5G必須特許シェア ~日経新聞~

(ポイント)
・ドコモの5G必須特許シェアは11.4%で世界3位
・1位はサムスン、2位はクアルコム
・2020年11月時点の特許の分析結果(サイバー総研調査)

(出典)
 

[AI関連発明]画像処理装置(特許6696095)

 (登録例)
【請求項1】(出願当初)  ニューラルネットワークにより入力画像を処理し、前記ニューラルネットワークの出力に基づいて、前記入力画像における部分領域毎に異なるホワイトバランス調整値を算出する算出部を備える画像処理装置。

 この発明は、予め学習済みのニューラルネットワークを用いて、部分領域毎に異なるホワイトバランス調整値を求め、求めたホワイトバランス調整値を使ってホワイトバランス調整を行う画像処理装置である。
 出願当初の請求項は、上記のように、ニューラルネットワークを使って部分領域毎のホワイトバランス調整値を求めるというだけしか規定していなかった。これに対して、進歩性なしの拒絶理由通知が出された(明確性違反も出ているが割愛)。
 引用文献1には、撮像装置で得られた画像を子画面に分割し、子画面ごとの色温度のヒストグラムから、子画面をグループ分けした各グループのホワイトバランス調整値を求めることが記載されている。他方、引用文献2には、予め学習させたニューラルネットワークに撮影画像を入力し、光源種を出力することが記載されている。引用文献1に係る発明に引用文献2に記載されたニューラルネットワークの技術を適用することで、本願発明に容易に想到し得るとされた。
 このように、ニューラルネットワークで処理するか否かという点だけが相違点の場合には、同一技術分野でニューラルネットワークが使われていることを示されて、組み合わせによって進歩性を否定される。
 
 本件は、請求項1に、進歩性の拒絶理由が発見されなかった請求項2の特徴を加えることで、特許査定を得ている。
 
【請求項1】(特許クレーム)
  ニューラルネットワークにより入力画像を処理し、前記ニューラルネットワークの出力に基づいて、前記入力画像における部分領域毎に異なるホワイトバランス調整値を算出する算出部を備え、
  前記算出部は、前記ニューラルネットワークにより前記入力画像を処理することによって前記入力画像に含まれる複数の画素のそれぞれに対応する複数のフィルタを生成し、前記入力画像に前記複数のフィルタを適用して得られた画像と前記入力画像とに基づいて、前記入力画像における前記部分領域毎に異なるホワイトバランス調整値を算出し、
  前記ニューラルネットワークは、
    前記入力画像を入力とし、前記複数のフィルタのフィルタ係数を出力し、
    既知の照明光下で撮像されることによって得られた画像と、前記既知の照明光下で撮像されることによって得られた画像に前記既知の照明光に基づくホワイトバランス補正を施した画像とを用いた機械学習により構築されている画像処理装置。

 

方法発明の間接侵害が否定された例(令和6年(ワ)第70583号)

  液晶キーボードのキーの背景画像を着せ替える方法に関する特許を有する原告らが、文字入力キーボードアプリ「Simeji」を製造販売するバイドゥ株式会社を訴えた事件である(東京地裁民事第46部・令和8年4月15日判決)。実際に本件各発明に係る方法を使用するのは、被告製品をインストー...