2022年6月10日金曜日

[商標]類否判断トレーニング

 商標類否判断のトレーニングのサイトを作成しました。

http://trademarkquiz.jp/quiz_trade_mark/

最近の審決、審査より題材を抜粋した。
審決ではほとんどが非類似と判断されている。審査で類似→審決取消で権利者が諦めた例(指定商品の削除等で登録審決)は、審査での商標「類似」の判断し、類似例としている。

類否判断には、若干のブレがあるように思う。特に、審査と審判では違うような印象である。しかしながら、グレーゾーンがあるということを認識した上で、どの辺から類似でどの辺からが非類似かを知ることには意味があると思う。

不具合などありましたら、ぜひ、ご連絡ください。

商標類否の非類似の理由はだいたい3パターンに分類され、次の順序で見ていけばよいと思う。
ステップ1 対比し得る部分を分離できるかどうか?
      一体不可分を理由に対比し得る部分を分離できなければ非類似。
ステップ2 対比し得る部分の称呼が類似するか?
      称呼が類似しなければ、ほぼ非類似。
ステップ3 称呼が類似している場合、全体として相紛れるか?
      称呼共通でも外観が著しく異なり、相紛れない場合は非類似。
     



2022年5月17日火曜日

無効審判と異議申立

これは単に思ったこと。

無効審判と異議申立、権利をつぶす観点からそれぞれの勝率が着目されるのは当然であり、統計的には大きな差がないことは、以前の投稿で記載したとおりである(2021/9/8、2020/9/9)。

そうすると、どちらも提起できる時期には匿名で提起できる異議申立が有利ということになる。しかし、審理の過程で特許権者に何を言わせるか、禁反言により何を権利範囲から除外させることができるか、という観点からは両者はかなり違う。

というのは、異議申立では取消理由があるかどうかをまず審判官が審理して、取消理由ありと判断された場合だけ、特許権者は反論すればよい。したがって、権利が維持されるという結論は同じでも、特許権者の反論が必要ないかもしれない。そうすると、権利には全くキズがつかない。
これに対し、無効審判では、まず、特許権者に反論の機会が与えられるので、審判官がどの点に着目するかということを知る前に反論しなければならず、いきおい「反論できるところは反論しておこう」ということになる。その中で、権利の限定材料が出てきたり、権利範囲の外延がより明確になる可能性がある。
異議申立の場合には、そもそも反論しなくてもよいかもしれないという上記の点に加え、審判官が取消の理由と考えている理由が分かるから、反論のポイントを絞りやすい。

ただし、無効審判の場合には、請求人が分かってしまうので、請求人の製品を研究されてしまうということはあるかもしれない。そうするとやはり一長一短か。


2022年4月26日火曜日

[米国]著作権侵害訴訟(メモ)

本日の研究会で知ったことのメモ。

・ 米国では、著作権侵害訴訟を提起するためには、著作権が登録されていることが必要

・セーフハーバー規定・・・特定の行為が特定の規則に違反しないとみなされることを指定する法令または規則の規定。

・Unicolors v. H&Mの最高裁判決(2022年2月24日)
 Unicolorsによる著作権の登録申請が正確でなかったことで登録が無効かという争点について、事実誤認だけでなく法律誤認があったという理由だけで登録が無効ということはないと判断。



2022年4月18日月曜日

[EP]技術的特徴と非技術的特徴からなるクレーム (審査ガイドライン)例1~5まとめ

 例1~例5の概要は以下のとおり。

発明概要

判断

1

ユーザが購入したい2つ以上の商品を選択すると、ユーザの現在位置に基づき、商品を購入するのに最適なルートを提示する発明

ユーザに2つの商品を選択させ、その2つの商品を購入する最適ルートを提供するというビジネス上のアイデアは技術的課題を設定する際には、満たすべき制約として与えられる。

その制約を満たすために技術的に何をしたか、という問題になる。進歩性なし。

2

貨物輸送のオファーとデマンドをユーザの現在位置に基づいてマッチングする発明

請求項の構成要件において、技術的な構成要素が主体となっていないため、ビジネス方法と技術的特徴が分離された。GPS端末を使った受注管理という全く違う先行技術を元に進歩性なし。

3

放送メディアを送信する際に、データ接続の最大レートで伝送を行うのではなく、ユーザが契約したデータレートで伝送するシステムの発明

最大レートより低いデータレートで送信するのは、顧客がその価格モデルに従ってデータレートのサービスレベルを選択することを可能にするという商業目的である。技術的課題を設定する際に、制約として与えられる。進歩性なし。

4

赤外線カメラの画像に基づいて、建物内の結露のリスクのある領域をユーザに示す発明

先行技術との相違点は、赤外線カメラを使ったこと、過去の平均温度・湿度を用いて結露温度を計算したこと。

相違点は、技術的効果に貢献する。技術的課題は、表面上の結露のリスクをより正確かつ信頼性の高い方法で判断する方法である。進歩性あり。

5

被処理物をコーティングする方法に関し、溶射コーティングプロセスのパラメータを自動調整する発明

先行技術との相違点は、ニューラルネットワークかニューロファジーコントローラか。

相違点に起因する効果がなく、代替解決策の提供にすぎない。進歩性なし。


上記の例から分かる注意点としては、次のようになる。

・相違点が、ビジネス上のアイデア、商業目的をアルゴリズム化したもの。
 →例1,例3 ビジネスアイデアは要求仕様として与えられる。進歩性なしとなり勝ち。
 →例2 書き方が悪いと、技術的側面として残るのは、コンピュータやGPSだけ。

・相違点が、技術的効果に貢献する。→例4 進歩性ある可能性(副引例との関係)

・相違点に起因する技術的効果なし。→例5 進歩性なし。寄せ集め。


2022年4月14日木曜日

[EP]技術的特徴と非技術的特徴からなるクレーム (審査ガイドライン)例5

 例5は、被処理物をコーティングする方法に関し、溶射コーティングプロセスのパラメータを自動調整する発明である。

「請求項1
溶射法を用いて被処理物をコーティングする方法であって、該方法は、以下を含むことを特徴とする、溶射法:
(a)スプレージェットを用いて、溶射によってワークピースに材料を塗布する;
(b)溶射ジェット中の粒子の特性を検出し、その特性を実測値として供給することにより、溶射プロセスをリアルタイムで監視する;
(c)実測値と目標値を比較する;実測値が目標値から乖離している場合,
(d)溶射コーティングプロセスのプロセスパラメータをニューラルネットワークに基づくコントローラによって自動的に調整し、前記コントローラは、ニューラルネットワークとファジー論理ルールとを組み合わせ、それによってニューロファジーコントローラの入力変数と出力変数の間に統計的関係をマッピングするニューロファジーコントローラである。 」

 この発明に最も近い文献D1は、「溶射ジェットを用いてワークピースに材料を塗布し、前記溶射ジェット中の粒子の特性の偏差を検出し、ニューラルネットワーク解析の結果に基づいてプロセスパラメータを自動的に調整することによる溶射プロセスの制御方法を開示している。」
 例5の発明とD1との違いは、D1ではニューラルネットワークを用いているのに対し、例5の発明では、ニューラルネットワークとファジー論理ルールとを組み合わせたニューロファジーコントローラを用いる点である。

 人工知能に関連する計算モデルやアルゴリズムは、それ自体、抽象的な数学的性質を持っているが、相違点にかかる特徴は、技術的目的に資する技術的効果の発生に寄与し、それによって発明の技術的性質に貢献するから、進歩性の評価において考慮される。これは、例4の場合と同じである。

 課題ー解決アプローチの客観的な技術的課題、および自明性の判断は、次のとおり。

「ステップ(iii)(c):客観的な技術的課題は、客観的に立証された事実に基づき、請求項の技術的特徴に直接的かつ因果的に関連する技術的効果から導き出されるものでなければならない。
 本件では、溶射プロセスへの具体的な適応に関する詳細な説明もなく、ニューラルネットワーク解析とファジーロジックの結果を組み合わせてパラメータを算出するという事実だけでは、プロセスパラメータの異なる調整以上の技術的効果を信頼性高く保証することはできない。特に、請求項1の特徴の組合せにより、コーティング特性または溶射方法の品質が向上することを認める証拠は見いだせない。このような証拠がない場合、客観的な技術的課題は、D1において既に解決されている溶射プロセスを制御するプロセスパラメータの調整という問題に対する代替的な解決策を提供することである。

「自明性:D1の教示から出発し、上記の目的技術的課題を課された制御工学の分野の当業者(G-VII、3)は、プロセスの制御パラメータを決定するための代替的解決策を探すであろう。
 第2の先行技術文献D2は、制御工学の技術分野において、ニューロ・ファジー制御器を提供するニューラルネットワークとファジー論理ルールの組み合わせを開示している。この先行技術から、本願の出願日において、ニューロファジーコントローラは、制御工学の分野でよく知られ、適用されていることが明らかになった。したがって、本解決は自明な代替案であると考えられ、請求項1の主題は進歩性がない。」

 相違点にかかるニューロファジーコントローラは公知技術であり、例5では、ニューラルネットワークに代えて、単にニューロファジーコントローラを使ったというだけであり、進歩性が認められないのは、至極当たり前に思われる。なぜなら、溶射コーティングプロセスのパラメータを自動調整にニューロファジーコントローラを用いたことによる技術的効果がなければ、公知技術の寄せ集めにすぎないので。
 
 ところで、この例における客観的な技術的課題を「代替的な解決策を提供すること」としているのは、進歩性なしという結論に結び付ける、うまい問題設定だと思った。
 例4では、「表面上の結露のリスクをより正確かつ信頼性の高い方法で判断する方法」という定式化を行っており、単に代替策ということではなく、正確かつ信頼性の高いというところまで技術的課題と設定しているため、この技術的課題の技術的解決を示唆する他の先行技術がなければ進歩性ありという結論になる。一方、例5では「代替的な解決策」を技術的課題としているため、ニューロファジーコントローラが知られていれば進歩性が否定されるという寸法である。
 公知技術を適用しただけで特段の効果が見えなければ、それは寄せ集めにすぎず進歩性なしという結論は普通だと思っていたので、そこまで分析的に考えたことはなかったが、客観的な技術的課題という考え方を介在させるとすれば、そういう課題(代替的な解決策の提供)を設定することになるのだろう。

[EP]技術的特徴と非技術的特徴からなるクレーム (審査ガイドライン)例4

  例4は、赤外線カメラの画像に基づいて、建物内の結露のリスクのある領域をユーザに示す発明である。例1~例3はいずれも進歩性のない事例であったが、この例は進歩性がある事例である。

「請求項1
建物内の表面について結露のリスクが高まっている領域を決定するコンピュータ実装方法であって、以下のステップを含む、コンピュータ実装方法:
(a)赤外線(IR)カメラを制御して、表面の温度分布の画像を撮影するステップ;
(b)過去24時間に渡って建物内で測定された空気温度および相対空気湿度の平均値を受け取るステップ;
(c)前記平均空気温度及び平均相対空気湿度に基づいて、前記表面に結露する危険性がある結露温度を計算するステップ;
(d)画像上の各点における温度を、前記算出された結露温度と比較するステップ;
(e)計算された結露温度より低い温度を有する画像ポイントを、表面上の結露のリスクが増大した領域として特定するステップ;
(f)ステップ(e)で特定された画像ポイントを特定の色で着色することによって画像を修正し、結露のリスクが高まっている領域をユーザに示すステップ。」

 ステップ(a)は明らかに技術的であるが、数学的なステップであるステップ(b)~(e)が技術的か否かが、最初に検討されている。

「したがって、アルゴリズムや数学的なステップ、および情報の提示に関するステップが、発明の文脈において、技術的効果の発生に寄与し、それによって発明の技術的性質に貢献するかどうかを評価する必要がある。
 上記のアルゴリズムおよび数学的ステップ(b)~(e)は、物理的特性の測定値(IR画像、測定された空気温度および時間経過による相対空気湿度)から、存在する現実の物体(表面)の物理的状態(結露)を予測するために使用されるので、技術的目的に役立つ技術的効果に貢献するものである。これは,表面上の結露のリスクに関する出力情報をどのように使用するかに関係なく適用される(G-II, 3.3,特に小項目 "技術的用途 "を参照されたい)。したがって、ステップ(b)~(e)は発明の技術的性質にも寄与する。」

 物理的な測定値から物理的状態を予測しているので、技術的効果に貢献し、技術的性質に寄与する。

ーーー
 例4の発明に最も近い先行技術は、次の文献D1である。
「文献D1には、表面に結露が生じる危険性を判断するために、表面を監視する方法が開示されている。結露のリスクは、表面上の1点についてIRパイロメータを介して得られた温度測定値と、実際の周囲空気温度および相対空気湿度に基づいて計算された結露温度との差に基づいて決定される。そして、その差の数値を、当該地点の結露の可能性を示す指標としてユーザーに提示する。」

 請求項1の主題とD1との相違点は、以下の通りである。
「(1)赤外線カメラが使用されている(表面の1点の温度しかとらえないD1の赤外線パイロメーターの代わりに);
(2)過去24時間に渡って建物内部で測定された空気温度と相対空気湿度の平均値を受信し;
(3)平均気温と平均相対湿度に基づいて結露温度を計算し、表面のIR画像上の各点の温度と比較する;
(4)計算された結露温度より低い温度を持つ画像点を、表面上の結露のリスクが高い領域として識別する;
(5)結露の危険性が高い箇所を色で表示する。

 以上のように、(1)~(4)の特徴は、クレーム対象の技術的性質に貢献するものであり、技術的課題の設定に際して考慮されるべきものである。これらの特徴は、(一点ではなく)すべての表面領域を考慮し、日中の温度変化を考慮する結果、結露の危険性についてより正確で信頼性の高い予測を行うという技術的効果をもたらす。」

 その一方で、(5)の特徴は、利用者の主観的選好に依存するので、技術的効果をもたらさないとされた。

 上記の分析から、課題-解決アプローチによって客観的な技術的課題は、「表面上の結露のリスクをより正確かつ信頼性の高い方法で判断する方法」と定式化された。

ーーー
「自明性 :表面上の温度測定値を得るために赤外線カメラを使用することは、発明行為を行うことなく、サーモグラフィの分野における通常の技術開発であると考えることができる。IR カメラは、本件の有効な出願日において周知であった。IRカメラを使用することは、当業者が表面の温度分布を得るために、IRパイロメータを使用して監視対象表面の複数の点の温度を測定することに代わる、簡単な方法である。
 しかしながら、D1は、表面上の温度分布を考慮し(単一点での温度とは対照的に)、空気温度の平均値を計算し、過去24時間にわたって建物内で測定された相対空気湿度を考慮に入れることを示唆していない。また、結露のリスクを予測するために、時間の経過とともに建物内部で現実的に発生する可能性のある異なる条件を考慮することを示唆するものでもない。
 特徴(1)〜(4)によって定義される客観的な技術的課題の技術的解決を示唆する他の先行技術がないと仮定すると、請求項1の主題は進歩性を有する。」

 上に下線を引いたところは、例1と対比して非常に異なる部分である。例1を振り返ってみると、
(1)ユーザは、(単一商品のみではなく)2つ以上の商品を選択して購入することができる。
(2)2つ以上の製品を購入するための「最適なショッピングツアー」がユーザーに提供される。
という2つの相違点は、客観的な技術的課題を把握する際に、満たすべき制約として組み込まれてしまっていた。
 これに対し、例4では、特徴(1)〜(4)は、客観的な技術的課題として評価されている。
 この違いは、例4においては、数学的なステップであるステップ(b)~(e)が「技術的目的に役立つ技術的効果に貢献するものである。」ためと考えられる。例1では、相違点(1)(2)は、「技術的な目的はなく、これらの相違点から技術的な効果を見出すことはできない。」と判断されていた。
 つまり、相違点にかかるアルゴリズムが「技術的目的に役立つ技術的効果に貢献するか」という点がポイントだと思う。

 この点について、ガイドラインの備考も次のように記載している。

「備考 :この例は、G-VII,5.4第2段落で扱った状況を示している。すなわち、単独では非技術的であるが、請求項に係る発明の文脈において、技術的目的に資する技術的効果の発生に貢献する特徴(アルゴリズム/数学的ステップである特徴(b)〜(e))である。当該特徴は、発明の技術的性質に貢献するものであるため、進歩性の存在を裏付けることができる。」

2022年4月11日月曜日

[EP]技術的特徴と非技術的特徴からなるクレーム (審査ガイドライン)例3

 例3は、放送メディアを送信する際に、データ接続の最大レートで伝送を行うのではなく、ユーザが契約したデータレートで伝送するシステムの発明である。

「請求項1 
 データ接続を介して遠隔端末に放送メディアチャンネルを送信するためのシステムであって、前記システムは以下を含む:
(a)遠隔端末の識別子と、前記遠隔端末へのデータ接続の利用可能なデータレートの表示とを記憶する手段であって、前記利用可能なデータレートは、前記遠隔端末へのデータ接続の最大データレートよりも低いことを特徴とする記憶手段;
(b)前記データ接続の利用可能なデータレートの表示に基づいて、データを送信するレートを決定する手段;
(c)前記決定されたレートで前記遠隔端末にデータを送信する手段。」

 最も近い先行文献D1は、加入者のセットトップボックスにxDSL接続でビデオを放送するシステムを開示しており、このシステムは、コンピュータ用に記憶された最大データ速度で加入者のコンピュータにビデオを送信する。

 容易に分かるように、相違点は次のとおりである。
「ステップ(iii):請求項1記載の主題とD1との相違点は、以下の通りである:
(1) 遠隔端末へのデータ接続の利用可能なデータレートの表示を記憶し、前記利用可能なデータレートは、遠隔端末へのデータ接続の最大データレートより低いこと;
(2) 前記利用可能データレートを使用して、前記遠隔端末にデータを送信するレートを決定する(D1のように前記遠隔端末に対して記憶された最大データレートでデータを送信するのではない)。」

 課題ー解決アプローチでは、客観的な技術的課題に基づき、上記の相違点は次のように定式化される。

「遠隔端末へのデータ接続のために最大データレートより低い「利用可能なデータレート」を使用することによって果たされる目的は、請求項からは明らかではない。したがって、明細書の関連する開示内容が考慮される。本明細書では、顧客が複数のサービスレベルから選択することを可能にする価格モデルが提供され、各サービスレベルは、異なる価格を有する利用可能なデータレートのオプションに対応すると説明されている。ユーザは、支払額を少なくするために、接続可能な最大データレートよりも低い利用可能データレートを選択することができる。したがって、遠隔端末への接続に最大データレートより低い利用可能なデータレートを使用することは、顧客がその価格モデルに従ってデータレートのサービスレベルを選択することを可能にするという目的に対応している。これは技術的な目的ではなく、財政的、管理的又は商業的な性質の目的であるため、第52条(2)(c)のビジネスを行うためのスキーム、規則及び方法の除外に該当する。 したがって、満たすべき制約として、客観的な技術的課題の定式化に含まれる可能性がある。

 利用可能なデータ速度を記憶し、データ送信速度を決定するためにそれを使用する機能は、この非技術的な目的を実施するという技術的効果を有する。」

 データ伝送に際して、最大データレートではなく、敢えて低いデータレートでの伝送を可能にするのは面白い考え方と思うが、これは商業的な目的であるため、このような考え方は評価の特許性の評価対象とはならない。評価の対象となるのは、次の事項である。

「ステップ(iii)(c):したがって、客観的な技術的課題は、顧客がデータレートのサービスレベルを選択することを可能にする価格モデルをD1のシステムにどのように実装するかということに定式化される。

自明性:この価格設定モデルに従ってデータ・レート・サービス・レベルの選択を実施するという課題を考えると、加入者が購入したデータ・レート(すなわち請求項1の「利用可能データ・レート」)、これは加入者のコンピュータ(すなわち請求項1の「遠隔端末」)へのデータ接続の最大データ・レートより低いか等しくしかあり得ない、を各加入者について記憶し、加入者にデータを送信するための速度をシステムで決定するために使用することは、当業者に明らかであるだろう。したがって、法52条(2)及び56条の意味における発明的進歩は含まれない。」

 上記のように、サービスレベルを選択可能な価格モデルの技術的な実装部分のみが相違点として評価される。
 サービスレベルを選択可能にしようとするならば(=与えられた制約を満たすためには)、最大データ・レートより低くするしかあり得ない、という理由で、文献D1から自明であると判断されてしまった。
 
 請求項と文献D1との相違点は、最大レートでデータ伝送するか否かである。
 日本の感覚では、最大レートでデータ伝送する文献D1から、低いレートでデータ伝送する構成とするのが容易かどうかということが問題になるので、それなりに有望な感じがする(少なくとも副引例は必須であろう)。しかし、課題ー解決アプローチにおける定式化では、データレートのサービスレベルを選択可能にするためには(商業目的を達成するためには)当業者ならどうしたか? という制約まで(日本流にいえば動機付けと言っても良いと思う)が定式化されてしまうので、簡単に自明という結論になってしまう。
 





方法発明の間接侵害が否定された例(令和6年(ワ)第70583号)

  液晶キーボードのキーの背景画像を着せ替える方法に関する特許を有する原告らが、文字入力キーボードアプリ「Simeji」を製造販売するバイドゥ株式会社を訴えた事件である(東京地裁民事第46部・令和8年4月15日判決)。実際に本件各発明に係る方法を使用するのは、被告製品をインストー...