2020年4月16日木曜日

情報管理方法事件(知財高裁 令和2年3月11日)

 
 特許無効審判に対する審決取消訴訟であり、新規性が問題となった。対象特許は、ウェブ広告の効果を見るため、どの広告を見て電話をかけてきたのかを管理するペイ・パー・コール方式に関する発明である。この場合、同じ広告であっても、どの提供サイトを見て電話を掛けたかを管理するためには、提供サイトごとに異なる電話番号を有しなければいけないという課題があるため、本件特許では、広告に動的に電話番号を割り当て、電話番号を再利用する。再利用のタイミングは、所定期間、電話番号が表示されないか、または、架電がされないことである。このタイミングに関し、本件特許では、「前記ウェブサーバに向けて前記識別情報が送出されてから一定期間が満了した場合に」と規定されている。
 これに対し、甲1発明は、同じくペイ・パー・コール方式を開示しており、その中に、以下の記載がある。
「[0078] また,本発明の一実施形態は番号を再利用することによって,必要とされる番号の総数を更に減らす。例えば,固有の番号が表示されてからある一定時間が経過した場合,システムは自動的にその番号を『クリーン』と見なして再利用し,番号のプールに戻すことができる。」

 原告は、「固有の番号が表示されてからある一定時間」とあるから、固有の番号がユーザ端末に表示されることが一定時間の始期であり、本件特許の「前記識別情報が送出されてから」とは相違すると主張した。
 裁判所は、甲1において、「表示」は、ユーザ端末等の画面のみに情報を映すという意味に限定されないと述べると共に、「かえって,甲1発明において,『表示』をユーザ端末等に電話番号が表示された時点と解すると,通信エラー等で電話番号が送出されたがユーザ端末等に表示されなかった場合には,『一定期間』が進行しないことになり,甲1発明の上記の課題が解決されないことになる。 」と述べて、原告の主張を採用しなかった。

 裁判所が判示するとおり、甲1の技術的意義を考えれば、一定期間の始期が、現にユーザ端末に表示されることまでを要するはずはなく、甲1の記載の言葉尻を捉えた原告の主張には無理があると言わざるを得ない。

 
 

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