2026年1月3日土曜日

「アプリケーションで提供されるサービス」の解釈(令和5年(ワ)70425)

  S.RIDE株式会社が、GO株式会社を相手取り、同社アプリ(GoPay)が特許を侵害するとして提訴した事案である。対象となった請求項8は以下の構成を備えている。下線は、争点となった要件である。

A:コンピュータに、所定のアプリケーションを記憶し、 
B:前記アプリケーションで提供されるサービスに関する情報を管理し、 
C:他の装置から受信した前記サービスを登録するためのデータを取得し、
D:取得された前記データに基づき、前記アプリケーションの処理により前記サービスを登録し、 
E:登録された前記サービスに関する情報を生成し、 
F:前記アプリケーションによりコマンドが処理されることで生成される前記サービスに関する情報の表示を制御するステップを含む処理を実行させるためのプログラム。

 従来は、新しい携帯電話機に切り替えたときに、元の携帯電話機で提供されていたサービスをUICC(Universal Integrated Circuit Card)に記憶しておき、UICCを用いて移行することが考えられるが、複数のサービスを提供する総合アプリの場合には、移行対象の個別サービスの内容までは確認できなかったという課題に鑑みてなされたものである。
 これに対し、GoPayでは、機種変更後の端末で機種変更前と同じ支払い方法一覧が表示されるというのが、原告の主張である(下記図は判決文より抜粋)。



[裁判所の判断]
⑴ 「前記アプリケーションで提供されるサービス」の意義 
 本件発明の構成要件Bは、「前記アプリケーションで提供されるサービスに関する情報を管理し」と規定しているところ、本件発明の構成要件は、その他に「アプリケーション」と「サービス」の内容及び関係を規定するものではない。そして、本件明細書等、「アプリケーション」と「サービス」の内容及び関係につき、「アプリケーション103は、例えば、クレジットカードの機能を実現するサービスを提供するためのアプリケーションである。」(【0012】)、「アプリケーション105は、総合サービスを提供するためのアプリケーションであり、サービス106-1、サービス106-2、サービス106-3を提供する。例えば、サービス106-1は、クレジットの機能を実現するサービスであり、サービス106-2は、トランスポート系のサービスを提供するサービスであり、サービス106-3は、クーポンを提供するサービスである。」(【0014】)、「第3アプリケーション256は、総合サービスを提供するためのアプリケーションである。後述するように、第3アプリケーション256は、クレジットの機能を実現するサービス、トランスポート系のサービス、クーポンを提供するサービスなど、複数のサービスを提供するためのアプリケーションである。」(【0030】)と記載されていることが認められる。
 本件発明の構成要件の上記規定及び本件明細書等の上記記載によれば、構成要件Bにいう「アプリケーション」は、複数のサービスを提供するものであり、構成要件Bにいう「前記アプリケーションで提供されるサービス」は、機能を実現するものである以上、アプリケーション自体がクレジット機能、クーポン機能その他の機能そのものを提供するものに限られると解するのが相当である。 
⑵ 被告プログラムの充足性 
 前記前提事実に加え、証拠(甲5ないし10、14)及び弁論の全趣旨によれば、被告プログラムは、GoPayというタクシー料金の決済機能を備えており、GoPayは、d払いと連携することによって初めてd払いを利用することができるようになること、他方、d払いは、訴外ドコモが提供する決済機能であり、タクシーを利用した際にその利用したタクシー料金に限り利用することができるにとどまり、これ以外の場面では決済手段として使用することができないこと、以上の事実が認められる。 
 上記認定事実によれば、被告プログラムにおけるd払いは、タクシー料金の個別の支払ごとにその都度利用されるにとどまるものであるから、被告プログラム自体がd払いという決済機能そのものを提供するものとはいえない。
 したがって、被告プログラムは、本件発明の構成要件Bにいう「前記アプリケーションで提供されるサービス」を充足するものとはいえない。

(コメント)
 裁判所は、「アプリケーションで提供されるサービス」の意義を特許請求の範囲および明細書の記載に基づいて解釈し、被告プログラムが連携するd払いは被告プログラムが提供するサービスではないと判断した。
 原告は、「サービス」の提供主体と「アプリケーション」の提供主体とが法的に同一主体でなければならないという限定はないとの主張もしたが、裁判所は、「本件発明の構成要件は、「アプリケーション」と「サービス」の内容及び関係を一義的に規定するものではないから、本件明細書等を参酌しない限り、その関係等が明らかにならない」として、原告の主張を退けた。
 d払いというサービスはd払いアプリが提供するものなので、提供主体がどうこうといったとしても、GoPayで提供されるというには無理があると思う。

 




0 件のコメント:

コメントを投稿

「アプリケーションで提供されるサービス」の解釈(令和5年(ワ)70425)

  S.RIDE株式会社が、GO株式会社を相手取り、同社アプリ(GoPay)が特許を侵害するとして提訴した事案である。対象となった請求項8は以下の構成を備えている。下線は、争点となった要件である。 A:コンピュータに、所定のアプリケーションを記憶し、  B: 前記アプリケーション...