2022年8月23日火曜日

[EP]ゲームのルールか技術的事項かPart3(T1543/06)

 先に紹介した2件の審決例を含む20件以上の審決で引用されている審決である。
 発明の内容は、ランダムに生成された数字に基づいて手が打たれるゲーム(例えば、双六)に関する。完全にランダムだと運ゲーであるが、この発明ではプレイヤスキルの要素を持たせるため、あらかじめ数字のシーケンスを与え、その中から、第1回目の動き、第2回目の動き、・・・を選択させる(一例として使った数字をシーケンスの中から削除していく)ようにした。
 請求項1は次のとおりである。

「1. ユーザーが手を打つ(makes move)ゲームまたは他のアプリケーションを実行するためのシステムであって、該システムは、
 プロセッサと
 インジケータを表示するためのモニタであって、該インジケータは複数の数字を表示する、モニタとを備え、プロセッサは以下のように構成される:
 入力デバイスからのユーザー入力に従って、1または複数の数字に対応するゲーム内のポジションの数だけ駒を進めること、
 前記インジケータを所定の回数だけ作動させて、前記複数の移動番号の第1のシーケンスを決定するように、前記インジケータを制御すること、および
 前記前進は、前記第1のシーケンスの第1の手番に対応する数の位置だけ前進することと、前記シーケンスの第2の手番に対応する数の位置だけ前進すること。」

[出願人の主張]
 本発明の貢献は、固定またはスクロールされた数字のセットを提示するインジケータによるグラフィカルユーザーインターフェースの提供に存在し、これは、ゲームを行うプロセスの効率に影響を与え、また、ゲームにある程度のスキル、予測性、洗練性、興味を付加する効果を有する。

[審判部の判断] →進歩性なし
「本発明の中心的な考え方は、ゲームプレイにおいて手番を生成し使用する方法、すなわちプレーヤに事前に提供されるグループに関するものである。これは、例えば、ゲームに付属するゲームルールのシート(「各プレイヤーは6個のサイコロを投げ、順番に、すべての番号がなくなるまで、サイコロの目の数だけ自分の駒を動かす」)に記載されているように、実際には(ボード)ゲームをプレイする典型的な指示として読むことができる。」

 審判部はまず本発明の中心的な考え方がゲームルールのシートに記載されている指示と同視できるものであるとした。そして、物理的手段であるプロセッサは、ゲームルールを実行するだけであると判断した。

「また、ゲーム規則と技術的実装の間には識別可能な相乗効果も存在しない。特許請求の範囲(および明細書)には、プロセッサがこれらの機能を実行するために具体的にどのように構成されるか、または、モニタがどのように指標を表示するかについての詳細は記載されていない。被告が「ゲームをプレイするプロセスの効率に影響を与え、さらに熟練度、予測可能性、洗練度、興味を付加する」と特定した効果は、ゲームの非技術的領域で重要となり得るゲームの関心事と要因に完全に関連しており、いずれにしてもルールの中心概念から流れているものである。これらは、モニターに固定された、あるいはスクロールされた一連の数字を表示した結果ではない。」

 クレームは、プロセッサの構成をゲームのルールにしたがった実行内容を特定する形で発明を規定しているが、本質は、ゲームルールのシートに記載された指示と同じであり、効果もゲームルール自体によって生み出されるものである。
 ゲームルールのシートに記載されているような内容は、当然、プレイヤが知っているから、本件についても、“クレームで特定されたルールをプレイヤが知っているかどうか”という判断基準があてはまると言える。


 

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