2022年8月19日金曜日

[EP]ゲームのルールか技術的事項かPart2(T0414/12)

 ダイス、トランプ、スロットマシーンリール等の模擬ランダム化装置を含む電子ゲームの発明についての審決である。特徴は、複数のスポーツイベントから選択されたスポーツイベントの1つ以上の結果に基づいて、ベットの結果を決定することにある。
 クレームから、プロセッサ手段の特徴を記載すると以下のとおりである。

(a)前記ベットを受信したことに応答して、受信したスポーツイベント情報に基づいて、複数のスポーツイベントからスポーツイベントを選択する1つ又は複数のアルゴリズムを実行する
(b)選択されたスポーツイベントにベットを割り当てる
(c) 選択されたスポーツイベントの1つ以上のイベント結果を受信する
(d) 前記少なくとも1つの入力値を、前記受け取ったイベント結果に基づいて少なくとも部分的に決定し、ベットの結果が少なくとも部分的には前記選択されたスポーツイベントの受信されたイベント結果に基づくようにする
(e)前記メモリ手段(52)は、前記ゲームのためのルールを決定する入力値の複数のセットを記憶するために動作可能であり、かつ
(f)前記プロセッサ手段(50)は、前記複数の入力値決定規則のセットを選択し、前記選択された規則のセットを利用することによって、前記1つまたは複数の入力値を決定するために動作可能である。

(最も近い先行資料との相違)
 ゲームの「チャンス」入力値を生成する「模擬ランダム化装置」としての乱数発生器を用いてベッティングゲームを行うよう動作可能なメモリ手段とプロセッサ手段とを含む公知の電子ゲーム装置が、最も近い先行技術として考えられることは議論の余地がないところである。当業者、すなわち、ソフトウェア工学の技術を有するゲームシステム開発者にとって、このような著名な装置は、発明のステップを評価するための良い出発点となるものである。
 このような著名な先行技術のシステムに関して、請求項1のシステムは、模擬乱数化装置の値を決定する方法のみが異なる。これは請求項の特徴である特徴(a)~(f)に定義されている。

(本発明の本質)
 プレイヤは「ゲーム結果が固定されていないこと、ゲームに勝つチャンスがあること」(7 ページ 27 行目から 28 行目)を知ることができる。このように、プレイヤは単に偶然のゲームに賭けているのではなく、表面上は偶然のゲームであるものを仲介して、スポーツイベントの結果に賭けているのである。重要なのは、プレイヤはそれを承知の上で行っていることである。このことから、審判部は、請求項に係る発明の基本的な核心思想は、実際には、スポーツイベントへの賭けとチャンスゲームを組み合わせた、いわば賭博場とゲームカジノを一緒にした新しいハイブリッドベッティング方式であると結論付けている。

(進歩性) →進歩性なし
 請求項1の特徴(a)~(f)は、それぞれベッティングスキームの異なる側面の明白な実装であり、当業者が著名な電子ゲーム装置でスキーム全体を実施すれば、すべて明白な態様に従うことになる。
 本発明では、スポーツイベントの結果に対してベットを行うので、改ざんの影響を受けにくいという効果があるが、これは、ゲームルールの特定の実装方法から生じる技術的効果ではなく、むしろベッティングゲームが変更されたことの直接的な結果である。非技術的なソリューションにすぎない。

 前述した任天堂のケース(T12/08)との違いは、プレイヤがルールを知っているかどうかということである。任天堂のケースでは出現確率のアルゴリズムを知らないのに対し、本件ではスポーツイベントの結果に依存することを知っている。そこが、非技術的なゲームのルールかどうかの判断の分かれ目になっている。

 

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