均等論は、被疑侵害品の構成が対象特許と同一でない場合にも、一定の要件を満たした場合に侵害を認める法理であり、 最高裁において以下のように判示されている。
「特許請求の範囲に記載された構成中に相手方が製造等をする製品又は用いる方法(以下「対象製品等」という。)と異なる部分が存する場合であっても、・・(均等論の5要件)・・、同対象製品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である(最高裁平成6年(オ)第1083号同10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁参照)。
上記のように、均等論の枠組みは、典型的には特許の構成Aが被疑侵害品では構成A´となっているような場合であるが、被疑侵害品に構成Aに対応する構成が存在しない場合はどうであろうか。
令和3年(ワ)10032号はこの点について以下のように判示した。
[裁判所の判断]
これに対し、被告は、対象製品等が構成要件の一部を欠く場合に均等論を適用することは、特許請求の範囲の拡張の主張であって許されない旨を主張するが、構成要件の一部を他の構成に置換した場合と構成要件の一部を欠く場合とで区別すべき合理的理由はないし、本件において、原告は、被告製品には構成要件 Cの「消弧材部」に対応する消弧作用を有する部分が存在し、置換構成を有する旨主張していると解されるから、被告の前記主張を採用することはできない。
このように裁判所は、構成要件の一部を欠く場合も均等論の枠組みの中であることを判示した。
構成要件の一部を欠くというのは、構成要件の分説によるようなところもあると思う。つまり、特許がA+B+C+Dに対し、被疑侵害品がA+B+Cである場合、構成Dを欠くということになるが、見方によっては、構成C+Dに変えて構成Cを採用しているということもできると思う。そう考えると、上記の最高裁の判示の自然な理解であるとも言える。
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