グリー株式会社が、ゲーム「クラッシュ・オブ・クラン」(クラクラ)が特許権を侵害するとして、スーパーセルオーワイを提訴した事件である。被告は、複数の構成要件の非充足、特許無効などの主張をしたが、裁判所は、このうち、「プレイヤによって選択されたゲーム空間の全体に配置済のゲーム媒体及びその配置位置を前記テンプレートとする」(構成要件1C、2D)の非充足を理由に、原告の請求を棄却した。
対象の特許は、いわゆる「街づくり」ゲームに関する特許であり、プレイヤは家、道路、港、駅、空港、城、訓練所等の様々な施設を好きな場所に建設し、好みの街を作り上げていくものである。特許では、こうした施設を配置した街を「テンプレート」として作成することを規定している。上述した構成要件1C、2Dは、テンプレートに関する要件である。次の図に示すように、すでに作り上げた一部または全部を選択することで、選択された配置等をテンプレートとして登録できる。クラクラは同じく街づくりのゲームであり、レイアウト・エディタという機能を有している。レイアウトエディタの機能は、次のようなものである。
「プレイヤは,本件ゲームのレイアウトエディタ機能を利用することによって,施設の種類と配置位置を定めるレイアウトを作成して,これを保存し,保存したレイアウトを編集して更に保存することができる。プレイヤが,保存したレイアウトから,特定の一つのレイアウトを有効化することによって,自分の村において,当該レイアウトに従った施設の配置がされることになる」(判決文より)
つまり、レイアウトエディタは、その名のとおり、村における施設のレイアウトを編集する機能である。クラクラにおいては、領域を選択するという操作はなく、特定のレイアウトを有効化するとその村のレイアウトが再現される。
原告は、「プレイヤによって選択されたゲーム空間の全体」とは、ゲーム空間の全体、すなわち、村におけるレイアウトだから、構成要件1C、2Dを充足すると主張したいようである。
裁判所は、「プレイヤによって選択されたゲーム空間の全体」における「選択」とは、テンプレートの作成について、プレイヤがテンプレートとするゲーム空間内の一定の範囲を選択することを前提として、テンプレートを作成する際に、プレイヤがゲーム空間内の全部の範囲を選択することを意味するものと解釈するのが相当であると述べ、クラクラは構成要件1C、2Dを充足しないと判断した。
本件および関連の仮処分事件の提訴の翌年の2018年1月には、被告は、非侵害を確信しているとしながら、レイアウトエディタ機能を削除した。結果としては非侵害であったものの、その判断が出る前から問題の機能を削除させたのだから、本件訴訟は成功といえるだろう。
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