特許庁が公表している特許・実用新案審査ハンドブックは、請求項や明細書の記載の仕方や審査の考え方を非常に詳細に記載している。その中から、ソフトウェア関連発明が発明に該当すると判断されるための請求項の記載について、一部を紹介する。
ソフトウェア関連発明が発明(=自然法則を利用した技術的思想の創作)に該当すると判断されるための基本的な考え方は、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働することによって、使用目的に応じた特有の情報処理装置又はその動作方法が構築されることである。
具体例を見てみる。次の例は、いずれも入力された文書の要約を作成する発明である。
具体例を見てみる。次の例は、いずれも入力された文書の要約を作成する発明である。
(例1)
文書データを入力する入力手段、入力された文書データを処理する処理手段、処理された文書データを出力する出力手段を備えたコンピュータにおいて、上記処理手段によって入力された文書の要約を作成するコンピュータ。
(例2)
複数の文書からなる文書群のうち、特定の一の対象文書の要約を作成するコンピュータであって、
前記対象文書を解析することで、当該文書を構成する一以上の文を抽出するととも に、各文に含まれる一以上の単語を抽出し、 前記抽出された各単語について、前記対象文書中に出現する頻度(TF)及び前記文書群に含まれる全文書中に出現する頻度の逆数(IDF)に基づくTF-IDF値を算出し、 各文に含まれる複数の単語の前記TF-IDF値の合計を各文の文重要度として算出し、
前記対象文書から、前記文重要度の高い順に文を所定数選択し、選択した文を配して要約を作成するコンピュータ。
前記対象文書を解析することで、当該文書を構成する一以上の文を抽出するととも に、各文に含まれる一以上の単語を抽出し、 前記抽出された各単語について、前記対象文書中に出現する頻度(TF)及び前記文書群に含まれる全文書中に出現する頻度の逆数(IDF)に基づくTF-IDF値を算出し、 各文に含まれる複数の単語の前記TF-IDF値の合計を各文の文重要度として算出し、
前記対象文書から、前記文重要度の高い順に文を所定数選択し、選択した文を配して要約を作成するコンピュータ。
例1は発明に該当せず、例2は発明に該当する。例1は、要約作成という使用目的に応じた特有の演算又は加工を実現するための具体的手段又は具体的手順が記載されているとはいえない。これに対し、例2は、入力された文書データの要約を作成するための、特有の情報の演算又は加工が具体的に記載されているからである。
例2には、ハードウェアの構成は、コンピュータしかないが、ソフトウェアとハードウェアが協働しているといえるのであろうか。これに対し、審査ハンドブックは次のように解説をしている。
請求項にはハードウエア資源として「コンピュータ」のみが記載されているが、「コンピュータ」が通常有するCPU、メモリ、記憶手段、入出力手段等のハードウエア資源とソフトウエアとが協働した具体的手段又は具体的手順によって、使用目的に応じた特有の情報の演算又は加工が実現されることは、出願時の技術常識を参酌すれば当業者にとって明らかである。
要するに、例1のようにやりたいことだけを記載してもダメだが、構成要件を特定するという通常の実務にしたがって情報処理を記載すれば発明該当性を満たす。
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