「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明」
特許法は、特許出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明は、特許を受けられないことを規定している。
近年では、インターネットに種々の情報が開示されるが、インターネットの情報は日々更新されるため、いつ公知になったものかを立証することは容易でない場合もある。裁判例を調べてみたところ、インターネットの情報が出願前に公知であったことを認めたものと認めていない例があった。証拠に記載された日付の信ぴょう性を評価するという事案ごとの判断がなされている。つまり、ケースバイケースであり一概にはどうということは言えないが、判断事例を知ることも意義があるので、いくつか例を挙げる。
Wayback Machineは、インターネットアーカイブが運営するデジタルアーカイブであるが、Wayback Machineの情報を提出している例が多数みられた。Wayback Machineの情報が認められた例として、平成30年(行ケ)第10178号、平成16年(ワ)第10431号がある。後者の裁判例では、平成15年12月9日時点のページと、平成15年2月27日時点のページを比べ、平成15年2月27日のページにはなかった「※意匠登録申請済※」の記載が平成15年12月9日のページに存在することが意匠出願の経緯とも合致するいう事情も考慮された。
Wayback Machineの情報が否定された例として、平成23年(ネ)第2651号、平成18年(行ケ)第10358号がある。前者の裁判例では、Wayback Machineの画像について、画像のURLのみが保存されている場合と、URLに加えて画像自体が保存されている場合があると述べている。画像を証拠とする場合には注意が必要であろう。
Wayback Machine以外の例として興味深いのはブログの更新情報が認められた例である(上記の平成30年(行ケ)第10178号)。ブログ本文の更新日の情報、ブログの更新情報に表示された年月日、および、ブログにその更新日時と開催期間が整合するイベントの開催告知が記載されていることから、その更新日に公衆に利用可能になったと判断された。
なお、周知技術の認定に用いられる場合、つまり、数ある証拠のうちの1つ(あるいは複数)といった場合には、公知日がどうこうということは言われていない印象であった。
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