米国のIPR(Inter partes review)でAAPA(発明者が自認した先行技術:Applicant Admitted Prior Art)を使えるかどうかが争点となったCAFC判決(Qualcomm v. Apple, CAFC 2020-1558, 2020-1559)についての報告。
[背景・経緯]
米国の審査においては、AAPA、すなわち、自身の明細書で先行技術として記載した技術は、その出願に対する先行技術として扱われ、拒絶の理由となり得る。このことは、MPEPにも記載されている。
IPRは、申立の根拠について、次のように定めている。
311条(IPR)
(b) Scope.--A petitioner in an inter partes review may request to cancel as unpatentable 1 or more claims of a patent only on a ground that could be raised under section 102 or 103 and only on the basis of prior art consisting of patents or printed publications.
下線で示した部分によりをどう解釈するかが問題となった。
特許権者であるQualcommは、IPRにおいてAAPAを基礎(basis)として用いることは認められていないと主張し、申立人であるAppleは特許または刊行物(書類それ自体が先行技術でなくとも)に含まれるあらゆる「先行技術」をIPRに用いることができると主張し、PTABはAppleの主張を認めた。
[CAFCの判断]
311条(b)の条文の文言や従前の司法解釈からみて、IPRでは特許または刊行物それ自体が先行技術であることが必要である。したがって、対象特許に記載されているいかなる記載も先行技術とはならないと判断した。
ただし、AAPAであるということによって一律にIPRから除外されるわけではない。IPRで、申立人が先行文献以外の証拠(専門家の証言等)に依拠することができるのと同じように、特許クレームが自明であるか否かを評価する際に、特許明細書での自認に依拠することは適切であると述べた。
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