2022年6月28日火曜日

[米国]クレーム解釈についての判決

  NATURE SIMULATION SYSTEMS INC.,(以下「NSS」)とAUTODESK, INC. の特許侵害訴訟。地裁がNSSの特許クレームは不明確であると判断したのに対し、CAFCが地裁の判断を誤りであると判断した。

[経緯・背景]
 被告であるAUTODESKは、専門家の宣誓供述書を提出し、NSSの特許クレームは不明確であると主張した。
 これに対し、NSSは、問題となっている文言は明細書に明確に記載されており、クレーム解釈を要せず、本技術分野の通常の意味に解釈すればよいと反論した。

 地裁は、専門家が当業者が理解できないと言っている場合に、クレームが明確かどうかを判断するためには、未回答の問題についての議論を見るしかないとし、クレーム文言について「未回答の問題」がある場合には、そのクレーム文言は不明確であると判断した。
 また、地裁は、明細書で「未回答の問題」に答えたとしても、クレームで答えていなければ、明確性の要件は満たさないとした。

[CAFCの判断]
 クレームは、クレーム文言、明細書、審査経過などの内部証拠に基づき、足りなければ、関連する科学的原則、技術用語の意味、技術水準などの外部証拠を参酌して解釈すべきである(Phillips v. AWH Corp)。地裁の判断は、このクレーム解釈のプロトコルを採用せず、「未回答の問題」という基準で判断しており、誤りであるとした。

 また、CAFCは、米国特許法112条の条文から見て、クレームの主たる機能は、排除する権利の境界を通知し、限界を定めることであり、発明を説明することではないと述べ、未回答の問題にクレームで答えなければ明確性の要件を満たさないとの地裁判断を否定した。
 
 さらに、CAFCは審査経過との関係について、次のように述べた。
 PTOの審査官は、特許性の法定要件だけでなく、関連技術にも精通しているとみなされるから、審査官の行動は、公的機関の行動として適切な敬意を払うべきである。我々は、審査官が、出願を許可する状態にすることをまさに目的としてクレームを修正することを選択した場合、クレームに不明確な用語を導入することはないと推定する。 
 なお、最後の見解に対しては、DYK判事による反対意見(特許審査官が不明確な表現を導入したという事実は、特許法112条の要件をクレームから免責するものではない。)が付されている。




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