2021年6月18日金曜日

[EP]AI関連発明の開示要件(審決T0161/18)

 2020512日に出された審決(T0161/18)において、AI関連発明の開示要件について重要な判断がなされた。この事件の対象となった特許は、心拍出量を決定する方法(Method for determining cardiac output)である。対象はドイツ語で記載されているので、特許の内容については、ファミリーの米国特許を参考にしている。

(発明の内容)
 発明の内容は、末梢領域における動脈血圧曲線から心拍出量を求める方法であって、動脈血圧曲線から中心血圧に変換し求め、中心血圧から心拍出量を計算する。動脈血圧から中心血圧に変換する過程で、学習によって得られた重み係数を持つ人工ニューラルネットワークを用いるというものである。

(EPO審判部の審決)※開示要件のみ
 どのような入力データが本発明による人工ニューラルネットワークの学習に適しているか、あるいは、技術的課題の解決に適した少なくともつのデータセットが開示されておらず、このため、(当業者は過度な負担を強いられることなく、)人工ニューラルネットワークを実施することができない。

 これは、例えば、発明者が実施してうまくいった実験結果を明細書において開示せよということなのだろう。確かに、ニューラルネットワークはブラックボックスなので、ニューラルネットワークを使って良い結果が出ることやその条件の開示がある程度は必要なのかもしれない。

0 件のコメント:

コメントを投稿

除くクレーム(令和6年(行ケ)第10081号)

 1 除くクレームについて  特許実務において、引用文献と差別化を図るために、構成要件の一部を除くことが行われることがある。新たな技術的事項を導入しないものである場合には構成要件の一部を除くことが認められるが(ソルダーレジスト大合議事件(平成18年(行ケ)第10563号))、...