知財管理2021年3月号に掲載されている石新智規先生の論説より、2020年8月26日に出された最高裁判決のポイントをメモしておく。以下、Unwired Planet International Ltd 他 v. Huawei Technology Co Ltd 他を「第1事件」、Huawei Technology Co Ltd, ZTE Corporation 他 v. Conversant Wireless Licensing SARLを「第2事件」という。
・英国の裁判所が英国特許だけでなく、グローバルライセンスをFRANDとしてその内容を判断することは許される(第1事件)。
・・特許権は属地主義であり、侵害判断は各国が行うが、FRAND条件はETSIのIPRポリシーに基づき、特許ファミリー全体に効果を持つから。
・・実務的には、グローバルライセンスは珍しくない。
・・各国で訴訟提起するのはコストがかかり困難である。
・ただし、英国以外で特許が無効、または非侵害になった場合には、既払い分について返還させたりロイヤリティ料率を減額する等の調整を行う(Huaweiは、そのような権利を有する)。
・中国の裁判所はグローバルでFRAND条件を判断する権限がないので、中国で審理するより英国の裁判所で審理する方が合理的である(第2事件)。
・中国の裁判所の審理を待ってもFRAND条件の審理・判断は期待できないので、中国裁判所の審理を待つ必要もない。
特許権者にとって非常に有利な判決であると感じられる。
なぜなら、特許権者は、英国で裁判を行って勝てば、全世界でのライセンス料を得られる。もし英国で負けても、属地主義により他国で勝つことは可能である。逆に、実施者は、英国で負けてしまうと、一旦、全世界でのライセンス料をとられ、各国で勝って、ライセンス料を取り返していかなければならないからである。
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