米国における特許審査では、クレームは「最も広範な合理的解釈(BRI: Broadest Reasonable Interpretation)」のもとで解釈される。クレームが条件付き制限事項を含む場合のBRIについてMPEP2111.04 Ⅱに解説がある。
例えば、方法クレームが「第一の条件が満たされた場合にステップAを、第二の条件が満たされた場合にステップBを実行する」(step A if a first condition happens and step B if a second condition happens)と規定していたとする。
第一の条件または第二の条件が発生しなくてもクレームされた発明を実施できるのであれば、クレームのBRIにおいてステップAおよびステップBはいずれも必須ではない。すなわち、引例にステップAかステップBのいずれかが開示されていれば、新規性が否定される。
これに対し、システムクレームでは同様の構成を含んでいても、ステップAを処理する手段、ステップBを処理する手段は必須の構成として判断される。なぜなら、機能が実際に実行されるか否かにかかわらず、当該機能を実行する構造が常に存在していなければならないからである。
以上の解釈は、Ex parte Schulhauserが先例となっている。
さて、実際にはいずれも必須であるステップAとステップBを含む方法クレームに対し、この基準に基づくオフィスアクションが出された場合にはどうすればよいか。
MPEPでは、条件付き制限事項を含んでいれば常に上記のように判断されるわけではないと記載されている。具体的には、クレームが第一の条件が発生することを前提としているならばステップAは必須と解釈されるし、第一の条件および第二の条件のいずれもが発生することを要するのであればステップAおよびステップBは必須と解釈される。
Ex parte Schulhauserの方法クレームがそうであったように、方法クレームにおいてif節を使うと、いずれかが実行されればよい選択的なステップと判断される可能性がある。そこで対策としては、if節の表現を使わないことが考えられる(if節を使わないで表現できるということは本質的には条件付き制限事項ではないともいえる)。