この審決は、大容量のデータベースを所定のソート条件で検索したときの検索結果を表示するデータ選択システムの発明(出願人はブリティッシュテレコム)に関する。
顧客ファイルを例として、この発明のポイントを説明する。ユーザがソートのための文(ステートメント)を選択すると、データ選択システムは、ソート文と顧客ファイルとの関連性を決定する。そして、データ選択システムは、ディスプレイにソート文を表示すると共に、顧客ファイルを示すデータ要素を表示する。このとき、関連性に基づいて、少なくとも1つのデータ要素を最初の位置からソート文の方へ相対的に移動させるエフェクトを表示する。そして、データ要素を選択することで顧客ファイルを選択する、というものである。
114,116,・・・122がデータの要素であり、124は最初の位置である。データ要素は、ソート文との関連性に基づいて、最初の位置124からソート文108~112に向かって相対的に移動する。例えば、要素114は、宛先Aへのコールが25%、宛先Bへのコールが0%、ISDNによるコールが0%の顧客ファイルを示す。要素114はソート文108に向かって移動する。要素120は、宛先Aへのコールが40%、宛先Bへのコールが40%、ISDNによるコールが0%の顧客ファイルを示す。要素120は、ソート文108と110から等距離にある軌道上を移動し、122に至る。
(先行文献D1との相違)
本件発明がD1と異なるのは、各データ要素の移動速度を決定し、各データ要素を相対的に移動させる点のみである。
(審判部の判断)
さて、本発明に戻ると、データファイルを象徴する要素が画面上を移動することで、情報を伝達することを意図している。このことは、特許明細書自体から明らかである。「各要素は、それが表すデータファイルとソートステートメントの関連性に従って動くので、データのパターンは容易に認識できる」(3頁第2文)。この特徴を単独で考えると、EPC 第52条(2)(d)の意味での「情報の提示」であると判断されなければならない。したがって、請求項の文脈では、この特徴が技術的効果を追加的にもたらす場合にのみ、進歩性に寄与することができる。
審判部の見解は、唯一の新機能が表示要素の移動に関するものであるため、本発明は情報の検索と取得に直接関係する問題を解決するものではないというものである。ビジュアライゼーションの直接的な効果は、それがユーザに与える印象である。この問題はあまりにも広範囲に及んでいる。より正確には、本発明は、データファイルに関する情報を、人が容易に評価できるような方法で提示する問題を解決するものであり、この人は、データベース内のデータファイルの検索および取得のためのシステムのユーザである。この表現は、この問題が純粋に技術的なものでないことをより明確に示している。実際、理論的には、同じ情報を自然文の記述や表で表示することも可能である。(これらの表示方法が実際に適切でないかは別問題である)。したがって、直接的な技術的効果はないように思われる。
(コメント)
下線を引いたように、ビジュアライゼーションはユーザに与える印象であり、技術的なものではないと判断された。
2つめの下線にあるとおり、同じ情報を別の態様で表すことができるかどうか?という観点は、ユーザに与える印象にかかるビジュアライゼーションなのか、技術的効果を伴うものかを判断する上で、一つの基準になるように思った。
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