PC等のユーザーインターフェースに関する発明についての審判である。明細書の図面の一部を抜粋する。(カラーの部分は、筆者にて追記)
この例は、旅行の予約をする画面であり、上の赤のところが手続きの流れを示している。不鮮明であるが、具体的には、
「一般データを入力(Enter General Data)→サービスの選択(Select Service)→レビューと予約(Review and Book)→確認(Confirmation)」
という手順で、このサイトの入力を進めることを示している。その下の青の部分は、「サービスの選択」の中のサブの手順であり、
「フライトの検索(Search for Flight)→フライトの選択(Select Flight)→レビュー(Review)」
という手順を示している。一番下の大きな枠は、フライトの検索条件を入力するためのインターフェースである。
本発明はこのようなインターフェースにより、多くのステップやサブステップを必要とするデータ入力のプロセスにおいて到達した段階を特定することが容易になるというものである。
(出願人の主張)
出願人は、コンピュータ資源の使用量の削減が、本件において要求される付加的な技術的効果であると主張した。その心は、ユーザーは、現在の段階で入力すべきデータの性質をより迅速に把握することができる。迅速に対応することで、時間のかかる入力トランザクションが少なくなれば、使用するコンピュータ資源が少なくなるという技術的効果があるというものである。
(審判部の判断)
特定のGUIレイアウトは、経験の浅いユーザーが、どこに、どのようなデータを入力すべきかを探す時間を確かに短縮することができると、審判部は考える。その結果、より少ないコンピュータ資源が使用されるかもしれない。しかし、この資源使用の削減は、特定の情報提示方法によって与えられた視覚情報をユーザーの脳がどのように知覚し処理するかによって生じるものである。
出願人は、事実上、次のような効果の連鎖があることを主張しているのである。すなわち、レイアウトの改善(判例によれば、これはまさに「情報の提示」である)により、ユーザーの「認知的負担が軽減」される;そのためユーザーの反応が速くなる;したがってコンピュータが必要とする資源が少なくなる。
しかし、技術的な効果という点では、レイアウトがユーザーの心理に影響を与える;先行技術よりも精神的な移行が早く行われる;ユーザーの反応が早くなり、コンピュータのリソース使用量が減る、というのは壊れた連鎖である。これらのリンクのうち、技術的効果と呼べるのは3番目だけである。つまり、従来技術よりも、ユーザーがコンピュータをアイドル状態にしておく時間が短いため、リソースの消費が抑えられるのである。
審判部は、このような壊れた連鎖を、全体として要求される技術的効果の証拠として受け入れることはできない。このような連鎖論が説得力を持つためには、それぞれのリンクが技術的なものでなければならないように思われる。したがって、出願人は、レイアウトがユーザーに心理的効果をもたらし、ユーザーがコンピュータに技術的効果をもたらすという、改善されたレイアウトによる付加的な技術的効果があることを立証していない。このことは、レイアウトがコンピュータに技術的効果をもたらすということと同じではない。
(コメント)
審判部は、壊れた連鎖という言い方をしているが、言いたいことはレイアウトの工夫によりユーザがデータの入力手順を理解しやすくなるということと、リソースの消費が抑えられること(技術的な効果)とはリンクしていないということと思われる。確かに出願人の三段論法のような主張は強引という印象であり、これを認めると多くのUIは同じ論法で技術的効果が認められることになってしまうだろう。
日本ではこうしたタイプの出願も結構あるので、どういう対策を取っていくべきか検討が必要である。他の事例もみていきたい。
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