予測できない顕著な効果に関する最高裁判決である。事件の経緯は以下のとおりである。
[特許庁前審決] 引用文献1と引用文献2との組合せは動機づけられない。
[前訴判決] 引用文献2の適用は容易に想到し得た。
[特許庁本件審決]組合せは容易だが、当業者が予測し得ない格別顕著な効果がある。
[原審判決] 本件各発明の効果は予測し難い顕著なものとはいえない。
最高裁は、以下のとおり、他の化合物において本件化合物と同種の効果を有することは、本件化合物の顕著な効果を直ちには否定することにはならないと判示した。
「上記事実関係等によれば,本件他の各化合物は,本件化合物と同種の効果であるヒスタミン遊離抑制効果を有するものの,いずれも本件化合物とは構造の異なる化合物であって,引用発明1に係るものではなく,引用例2との関連もうかがわれない。そして,引用例1及び引用例2には,本件化合物がヒト結膜肥満細胞からのヒスタミン遊離抑制作用を有するか否か及び同作用を有する場合にどの程度の効果を示すのかについての記載はない。このような事情の下では,本件化合物と同等の効果を有する本件他の各化合物が存在することが優先日当時知られていたということから直ちに,当業者が本件各発明の効果の程度を予測することができたということはできず,また,本件各発明の効果が化合物の医薬用途に係るものであることをも考慮すると,本件化合物と同等の効果を有する化合物ではあるが構造を異にする本件他の各化合物が存在することが優先日当時知られていたということのみをもって,本件各発明の効果の程度が,本件各発明の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであることを否定することもできないというべきである。 」
その上で、原審判決の問題点について以下のとおり指摘した。
「原審は,結局のところ,本件各発明の効果,取り分けその程度が,予測できない顕著なものであるかについて,優先日当時本件各発明の構成が奏するものとして当業者が予測することができなかったものか否か,当該構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるか否かという観点から十分に検討することなく,本件化合物を本件各発明に係る用途に適用することを容易に想到することができたことを前提として,本件化合物と同等の効果を有する本件他の各化合物が存在することが優先日当時知られていたということのみから直ちに,本件各発明の効果が予測できない顕著なものであることを否定して本件審決を取り消したものとみるほかなく,このような原審の判断には,法令の解釈適用を誤った違法があるといわざるを得ない。 」
最高裁は、組み合わせが容易であることを前提として効果の顕著性について評価をすることは誤りであると指摘した。結局、本件審決が、組合せは容易だが当業者が予測し得ない格別顕著な効果があると判断したように、組み合わせが容易か否かということと、発明の構成から予測し得ない効果があるか否かということは、別々に評価しなければならない。
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